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一睡の夢、一時の温もり エピローグ
日時: 2010/05/20 22:38:13
名前: 伏龍 

皆様始めましてもしくはお久しぶりです伏龍と申します。

ここに掲載するのは昨年に投稿した「一睡の夢、一時の温もり」のエピローグです。
エピローグなので投稿小説部屋にある「一睡の夢、一時の温もり」を完結編まで読んでいないとストーリーと登場人物が分からないと思いますので
本編を先に読んでからこちらを読むことをお勧めします。
メンテ

Page: 1 |

Re: 一睡の夢、一時の温もり エピローグ ( No.1 )
日時: 2010/05/20 22:39:46
名前: 伏龍 

―「わたしはあなたのことが大嫌いだったのよ・・・」―――

―――亡き父・義輝が言った『友』と呼べるかもしれない存在が現れた矢先につきつけられたのは―――

―――フェイトを絶望に突き落とすに充分な『真実』と『言葉』―――

―――フェイトの目からは生気が失われて―――

―――まさに『人形』という言葉がふさわしいほどに変わり果ててしまった―――

―――なのはやアルフの言葉もフェイトには届かない―――

―――今まで我慢してフェイトを守ってきたアルフは思わず漏らす―――

―――「オヤジ・・・助けて・・・・・・フェイトを助けて・・・・・・」―――

―――それは切実なる叫び―――



一睡の夢、一時の温もり
エピローグ『希望』 前編



side アルフ

あの日、二条城からかろうじて脱出したあとの生活はまさに時計を逆に戻した感じだった。

フェイトは元のオヤジと出会う前の頃のフェイトに戻ってしまった。

食事もとらず、ろくに休まずただあのくそババアの言うとおりにジュエルシードを集めていたあの頃に・・・

なんど諌めても「大丈夫だから・・・」で済まされてしまう。

だけどかく言うアタシも食事の量が減っているのは事実・・・

なんていうか・・・味気がないっていうか、おいしく感じられないんだ・・・。

こっちの世界に帰ってきて久々にありつけた好物のドックフードが以前と比べておいしいって思えないんだ・・・。

最初は何でなんだろうって思ったけどすぐに分かった。ここにはアタシ達二人だけしかいないからだって。

だって食事のときはいつもオヤジやばあちゃんが一緒だった、ときには城のみんなと一緒に大きな部屋で食べたからすごく食事の時間が楽しかった。

みんなが忙しいときもあったけど二人だけで食事、ということはあの頃は絶対なかった。

最低でもオヤジかばあちゃんのどちらかは必ず一緒に食べてくれた。

あっちでの食事は味の面でいろいろと違和感を感じたりすることも最初はあったけどすぐに気にならなくなった。

だって、味よりもオヤジ達と一緒に話しながら食べるのがすごく嬉しかったから・・・

フェイトも「今日はこんなことがあった」とかその日に起こったこと、感じたことをオヤジに話す姿を見てて嬉しかった。

でも・・・オヤジはもうこの世にいない・・・アタシ達を守って炎で燃え盛る城に消えていった。

オヤジだけじゃない、ばあちゃんや城のみんな・・・みんなアタシ達を守って死んでしまった。

食事になるとどうしてもあの楽しかった日を思い出してしまう、アタシでさえそうなんだからフェイトにとっては食事でそのことを思い出してしまうのかもしれない・・・。

もっともアタシが見たり聞いたりする限りフェイトはあの頃のことを『夢』だと認識しているみたいだ・・・。

フェイトが眠りから目を醒ましたときに必ず「また夢を見たの・・・、お父さんの夢を・・・、おばあちゃんやお城のみんなと一緒にすごす楽しい夢を・・・」
アタシはそれに対して何も答えることができない・・・本当はフェイトに言ってあげたい。

「あれは夢じゃない!現実にあったことなんだ!確かにフェイトのオヤジなんだ!」

でも、言えない・・・もしそのことを告げたら当然オヤジやみんながどうなったのかを告げなければならない。

あの日、オヤジが死んだあのときのフェイトが狂ったように泣き叫ぶ姿は今もあたしの脳裏に焼きついている。

全てを告げたらおそらくそれと同じ光景かそれを上回る悲惨な光景を生み出すことになるのは間違いない。
それを思うとアタシはフェイトの言葉に相槌を打つことしか出来なかった・・・。

あれからそんなに時間は経ってないからオヤジに代わる頼れる人なんて当然見つけられやしない・・・。

っていうかオヤジ以上に頼りになる奴なんて本当にいるのかって考えたくなる。

オヤジの強さは文句なしだった、アタシとフェイトが二人がかりでも倒せなかったしババアだって二度も撃退している。

魔法が使えなかったからそのたびにひどい怪我を負ってたけど・・・

それにただ強いだけじゃない、誰よりもフェイトを慈しんでくれた。

フェイトに温もりを与え、戦う事そして人に刃を向けることがどれほどの重大事かをフェイトに教えて、そしてフェイトの未来まで考えてくれた。

そればかりかアタシにまで「よく頑張ったな」と声をかけてくれてアタシが唯一甘えることのできる大きな存在だった。

そんな大きな人にこれからフェイトは会えるのだろうか?

そしてオヤジが言った通りにフェイトにとって喜びも悲しみも分かち合ってくれる『友』は本当に現れるのだろうか?

いつも悩むときアタシはフェイトにも隠れてある品を見つめる。

それは二条城から脱出したときにフェイトが肌身離さず持っていたもの・・・

オヤジと初めて町に出たときにオヤジからフェイトにプレゼントされたかんざしと最後の日にフェイトが握り締めていた血で真っ赤に染まったオヤジの服の切れ端・・・

この二つがフェイトとアタシに残されたオヤジの形見になる。

フェイトが目を醒ましたときに返そうと思ったけどフェイトが目を醒ましたときのあの表情や夢と思い込んでるのを見るととてもこれを渡すことができない・・・

だから今もアタシが大切に保管している、いつかフェイトに真実を話して返せる日がくることを信じて。

でも、そんな日が果たして来るのだろうか?考えれば考えるほど不安になる

「オヤジ、リニス、アタシどうしたらいいの・・・どうすればフェイトを助けることができるの?」

フェイトが寝静まったときにオヤジの形見にぼやきを漏らすのが日課になってしまった・・・

「オヤジ、助けて!」とは絶対に言えない・・・オヤジは命をかけてフェイトを守ってくれた。

ばあちゃんやみんなも命をかけてアタシとフェイトを守ってくれた。それに答えるためにもアタシは泣き言なんて言えない!

リニスもそうだ、リニスからも『フェイトが道を見失ったときはあなたが導いて』と消滅前に託されているけど・・・

でも、アタシにはオヤジのような強さもリニスのような知識も無い、

もちろんフェイトを思う気持ちだけは誰にも負けないつもりだけど実際それだけじゃどうしようもない・・・

今もアタシは考えてしまう。時間をさかのぼってオヤジを強引にでも脱出させられたら・・・、あのとき松永久秀って奴の挑発に乗らずに逃げ出していれば・・・。

叶うものなら、あの頃に帰りたい・・・あの頃に帰ってやり直したい・・・って



side フェイト

また、夢を見た。

私にはいないはずのお父さんの夢。

お父さんだけじゃない、おばあちゃんがいて、他にお父さんに仕える人達がいて。

そこはお城で私は『姫』と呼ばれてみんなに大切にされている。

お父さんは優しく、強く、そしてとても大きい人。

時には笑顔で『よくやったな、フェイト』と私を褒めてくれたり、時には厳しい顔で『人に刃を向けることは覚悟のいることだ』と叱ってくれたり。

でも、常に一緒にいてくれて、一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に考えてくれて、一緒にご飯を食べて・・・

充分すぎるほど欲しいものをくれるお父さん。

お父さんだけじゃない、おばあちゃんも常に私の側で微笑んでくれて。

お城のみんなも『姫、おはようございます』『姫、それがしも手伝いましょう』って声をかけてくれたり私の仕事を手伝ってくれたり・・・

すごく、すごく幸せな夢を見る・・・。

でも、夢の最後は必ずお城が燃えるの・・・

そしてお父さんやおばあちゃん、お城のみんなが私を守って死んでゆく・・・

そして目が覚めると時の庭園の自分の部屋・・・

でも、まるで実のことのようにはっきりと手にとるようにその時の情景が浮かぶの・・・言葉まではっきりと。

なんでなの?だって私にお父さんはいないはず、お城も今私達がジュエルシードを探している世界とは違って古い時代と思われるお城。

お父さん達の衣装もここの世界とは違って古めかしいというか、なんか大掛かりなもの。

そんなことまではっきりと覚えているの・・・

そして気になるのはもう一つ別の夢を見るの。

そっちの夢は母さんと一緒の夢なの。

母さんはとても優しくていつもピクニックなどに連れて行ってくれて母さんの手作りサンドイッチなどを頬張って・・・

こちらは昔の夢のはずなのに、おかしいことがあるの・・・

それは私は母さんを『母様』と呼んで母さんは私を『アリシア』と呼んでいた・・・

なんでなの?アリシアって誰なの?それにどうして私は『母さん』と呼ばずに『母様』と呼ぶの?

それに私はいつから母さんが夢のように笑わなくなったのかはっきりと覚えていない。

母さんの笑った記憶はところどころしか浮かばない。
翻ってもう一つのお父さんの夢は違う。

お父さんとの出会いから一緒に暮らすまでのいきさつ、そして楽しい日々から最後の別れまではっきりと思い浮かべることができる。

こんなにはっきりと思い浮かべることが出来るのは私の理想の夢だから?

ううん違う、だって私はあんな終わり方を望んでいない!お父さん達が私の為に死ぬなんてそんなこと望まない。

これはなんでなの?現実にあった母さんの夢は違和感を覚えてなんでいるはずのないお父さんの夢は言葉一つ一つまで思い出せるの?

そのうち私はわからなくなる、どちらが本当にあったことなのか・・・

そんなの決まっている、私にお父さんはいないんだから・・・母さんのほうが現実なの。だってお父さんの夢には母さんがいないんだから・・・

でも、今の私にはそれを絶対とは言えない・・・なんでなの、夢の中の母さんが『フェイト』と呼んでくれないから?

もう、わからない・・・どちらが本当にあったことなのか・・・それとも今が夢で夢のほうが現実なのか、考えれば考えるほどわからなくなる・・・

しばらくして私は一つの答えにたどり着いた。

これは私への罰なんだ・・・

多くを望んだ私への罰なんだ・・・

母さんの夢の違和感は母さんの苦しみも分からずに母さんの優しさを求めた罰・・・

お父さんの夢は多くを望めば必ずああいう結末になるという神様の罰・・・

今、私は多くを望んではいけないんだ・・・

だから、今は母さんの望むジュエルシードを集めることだけに専念する・・・

そうすれば、母さんはきっと笑顔を取り戻してくれる・・・

今は何も求めてはいけない・・・そして、誰にも関わってはいけない・・・

もし関わったらきっと夢の中でのお父さんのように、分かり合った瞬間に失ってしまうだろう・・・

あんな夢の最後のような光景はイヤ・・・もし現実に起こったら私はきっと耐えられないだろう・・・

だから誰の呼びかけにも私は答えない、もう失うのはイヤだから・・・

だからジュエルシードを集めているときに私に呼びかけてくる白い服を着た私と同じくらいの魔導師の女の子にもこう答えた。

「答えても、たぶん意味がない」と



side プレシア

くっ・・・ジュエルシードの集まりが悪い。

これも全てあの出来損ないの人形が加減をしているから・・・

身体に覚えさせても一向に成果はあがらない・・・もう時間はないというのに。

なんだか魔導師が現れて邪魔をされているみたいだけどそれがなんだというの!

そんなポッと出の魔導師に手間取っているなんてリニスはあの人形に何を教えていたの!

さらに私をイラつかせるのはそれだけじゃない・・・。

フェイトに罰の鞭打ちを与えると途中で必ずあの男が現れる・・・。

とっくに死んだはずのあの男があの人を見透かすような目で私を見続ける。

なんなの?なんで今更あの男の幻影に怯える必要があるの?

それ以前に私はなぜあの男に怯えなければいけないの?

『世の中には貴様と同じようにつらい目にあっている人間などたくさんいる』

あの男の声が聞こえるたびに私は耳を塞いで叫ぶ

「黙れぇ、あなたに何が分かるというの!私の苦しみの何がわかるというの!」

『話さねば何もわからぬ、なぜ話そうとせぬ』

「話したところで何になる、話しても誰も分かりはしない、何も戻りはしない!!」

そうして叫ぶうちに今度はリニスの声まで聞こえてくる・・・。

『この方はあなたと同じです、あなたは自分自身を討とうとしているのです・・・』

フェイトを庇って死んだあの男はアリシアのために全てをかける私と同じだと、リニスは言っているのだ。
いや、違う!

そんなことは認めない、認めるわけにはいかない。

なぜならそれを認めたら私は・・・。

その声を振り切るかのようにフェイトにさらに鞭を加えようとしたら部屋の後ろから轟音が鳴り振り向けばフェイトの使い魔が私の襟首を掴んでいた。

「アンタは母親であの子はあんたの娘だろう!あんなに頑張ってる子に、あんなに一生懸命な子に、なんであんな酷いことができるんだよ!」

「うるさい使い魔ね・・・」

いちいちうるさい使い魔の腹にフォトンバレットを打ち込んで吹き飛ばそうとしたらそれは防がれた。

「負けるもんか、アタシはリニスやお城のみんな・・・それになによりオヤジからフェイトの未来を託されたんだ、絶対アンタなんかに負けてたまるか!」

「・・・オヤジ?」

「そうさ、アタシがこの世でフェイトの親と認めるのはリニスと・・・オヤジこと足利義輝があるだけさ!」

「足利・・・義輝・・・・・・」

その言葉を聞いて私の頭に血が上っていくのがわかった。まるで『足利義輝』という言葉が引き金になったかのように

私の身体の中で破壊の衝動が駆け巡っていくのがわかる。

「オヤジ、リニス、ばあちゃん、みんな、アタシに力を・・・フェイトを守る力を!」

使い魔が再び私に突進してくる

「・・・するな」

「?」

「私の前であの男の名前を二度と口にするなぁ!」

駆け巡る怒りと共に自分でも何を使ったかわからない攻撃魔法と共に使い魔を吹き飛ばした。

魔法を使った瞬間その場に荒い息遣いとともにへたりこんだ。

使い魔の姿が見えない、ひょっとしたら転移魔法でどこかへ逃げたのかもしれない、だがそんなことはどうでもよかった。

それよりも私の前にたびたび現れるあの男の存在が問題だった。

なぜなの?何がいけないの?

私はただ、アリシアを取り戻したいだけ・・・。

アリシアと共に失われた楽しい日々を取り戻したいだけ・・・。

そのためにはどんな手段も厭わないしこの身を引き換えにする覚悟も出来ている。

なんで、リニスもあの男も邪魔をするの?

「私はただ、アリシアを取り戻したいだけなの・・・それ以外は何も望まない・・・だから邪魔をしないで・・・お願いだから消えて、義輝・・・」

もう、とっくにこの世にいないはずの男につぶやくのもどうかしてると思いながらも私は口にしてしまう。




次元航行艦アースラの一室―――

そこには光を失い人形のように心を閉ざしたフェイトがベッドに力なく横たわっていた。

そこには今、アルフだけが付き添っていた。

(チクショウ・・・なんで、なんでこんなことに・・・なんでフェイトがこんな目に合わなきゃいけないのさ・・・)


ジュエルシードを求めて探す日々に変化が現れたのはフェイトの前に現れた白い服の魔導師・高町なのはが原因だった。

最初こそ戦い方は覚束なく、フェイトが簡単にあしらえるほどだったが、彼女はめげずにフェイトの前に現れた。

そして「話がしたい」「あなたの名前は」などと呼びかけてくる。

アルフは聞く耳を持たないようにフェイトに言うがそれにもめげずにフェイトに語りかけるなのはの真摯な態度にフェイトも少しづつだが変化を見せる。

そしてなのはの「友達になりたいんだ」という思いはついにフェイトを動かす。

アルフはそんななのはの思いに打たれついに「フェイトを頼む」とまで託すようになる。

そしてなのはとフェイトは自分達が持つ全てのジュエルシードを賭けて全力勝負を展開。

死闘の末なのはのスターライトブレイカーはフェイトをとらえ、勝利する。

その果てに初めてみせたフェイトの笑顔の兆し

アルフはこの高町なのはこそが父・義輝が言った『友』だと確信した。

義輝が言ったフェイトの未来が開けるかもしれない、そう思った矢先に突きつけられたのは

先ほどの光明さえも打ち消すような絶望だった。

アースラのブリッジに戻って大画面に映し出されたのはカプセルに入っているフェイトそっくりの女の子
いや、プレシアに言わせればアースラにいるフェイトこそがカプセルに入っている自分の娘・アリシアの代わりなのだ。

だが、プレシアに取ってフェイトは代わりにもならなかった。

利き手が違う、性格もアリシアと違っておとなしい、それらの理由でプレシアはフェイトを捨てた。

いや、フェイトの名前の由来を聞いたときでさえアルフは愕然となった。

人造魔導師計画プロジェクトF・A・T・E

その頭文字を取ってフェイトと名付けたのだ。

そしてフェイトはアリシアを蘇生させるために次元の挟間に存在しているといわれる
異様なまでの技術力を誇った忘れられし太古の都・アルハザードへ飛ぶためのジュエルシード捜索の道具にしか過ぎなかった。

アルハザードは魔導と医療の分野に関しては最近のよりも遥かに優れた技術が確認できる。

アースラの艦長、リンディ=ハラオウンは『アルハザードは旧暦の次元断層により消失した』と説明するが
プレシア達研究者側から言わせれば『アルハザードは消失ではなく次元の挟間に今だ存在している』らしい。

その失われた技術を持ってアリシアを蘇生させることがプレシアのジュエルシードを欲する理由だったのだ。

さらにフェイトをショックに追い込んだのはプレシアの言葉

「わたしはあなたのことが大嫌いだったのよ・・・」
「!」

「だからあなたはもういらないわ・・・どこへなりとも消えなさい。そうよ、あなたにはいるじゃない・・・あなたを心から愛してくれる親が・・・」

「?」

一瞬、フェイトは誰のことを言っているのかわからなかった。

だが、アルフは気付いた

「ババア、それ以上言うな!」

だがアルフの言葉を気にかけるでもなくプレシアの言葉が続く

「あら、忘れたのフェイト?ひどい子ね・・・あれだけあなたを愛してくれたお父さんのことをもう忘れたの?」

「お・・・とうさん?」

「ババア!」

アルフが必死の形相でプレシアの言葉を遮ろうとする。

側にいるなのはとスクライア一族の少年・ユーノスクライアもその形相にただごとではないと感じながらも
アルフに「誰のこと?」とは聞けなかった。特になのはは自分の感が「聞いてはいけない」と言っているようで見守るしかできなかった。

「ね、ねえアルフ・・・母さんは誰のことを言っているの?お父さん?・・・私にはお父さんはいないはずだよね、そうだよね?」

フェイトがまるですがるような表情でアルフを見る。

アルフはその表情を見てどうしようか悩んだがしばらく思い悩んだ末に自分が大切に保管していた物をフェイトの前に差し出した。

「何、これ・・・この赤い布と、この長い棒のような物は?」

フェイトが恐る恐る手に取る

「・・・フェイト、それはオヤジが初めてフェイトにプレゼントしてくれた髪飾りだよ・・・」

「髪・・・飾り」

「そしてこっちの
布は・・・オヤジが最期に着ていた服の切れ端だよ・・・オヤジと別れる際にフェイトが必死にしがみ付いて破れた服の切れ端・・・」

「服・・・最期・・・」

「フェイト・・・思い出して!あのババアの言うとおりフェイトにはオヤジがいた。血なんか繋がらなくても心からフェイトを愛してくれた
お父さんがいたことを・・・足利義輝というフェイトにとってもアタシにとっても素晴らしいオヤジがいたことを!」

「足利・・・義輝・・・お父さん・・・」

その言葉と二つの形見の品を前にフェイトの脳裏に次々と記憶が蘇る、夢で見ていた光景が・・・

いや、それは夢ではなくフェイトが夢と思い込もうとしていた現実、

言葉の全てまでもがフェイトの脳裏に蘇る

『ここで暮らさぬか?』

『よくやったな、フェイト』

『余はフェイトの父だ、例え短い一時であろうともな!』

父・義輝だけではない。祖母の慶寿院の言葉もよみがえる

『子供は遠慮なんてしなくていいんですよ』

『とても楽しい日々でした・・・まるで孫ができたみたいで・・・』

次々の蘇る記憶、他にも城にいた義輝の家臣達から大切にされる日々、助けたり助けられたりフェイトにとって夢のような日々、

そしてあの日、義輝の宿敵・松永久秀と組んだプレシアが二条城に攻めてきた日の記憶もはっきりと蘇った。

自分を守って死んだ慶寿院や家臣達の最期、そして―――

『さらばだフェイト、アルフ,そなた達の父となれて余は幸せであったよ・・・』

笑顔でフェイトに別れを告げて炎の中に消えた義輝の姿をはっきりと思い出した

「う、嘘・・・・・・そんな・・・・・・それじゃ・・・・・・」

フェイトの表情が先ほどとは比べ物にならないほど怯えた物になっていた。

「フェイト、気を確かに!オヤジは確かに死んだけど・・・でも」

「い・・・・・・いやぁぁぁぁぁ、お父さあん!おばあちゃん!なんで・・・なんでぇ、どうしてぇ!」

フェイトは狂ったように泣き叫んだ

「フェイト落ち着いて、お願い!」

「フェイトちゃん、しっかり!」

必死に宥めようとするアルフとなのはだが止められるわけがなかった。

フェイトはそれから十数分間父・義輝の名を叫びながら泣き、そして意識を失った。


意識を失ったフェイトは一室で寝かされていた。先ほどまではなのはも側にいた。

だが、今はユーノやアースラの執務官を務めるクロノ=ハラオウンと一緒に時の庭園に向かっている。

ジュエルシードによって次元断層を作りアルハザードへ飛ぼうとするプレシアを止めるために・・・。

だが、アルフはその気になれなかった、何より大切なフェイトが放心状態なので放っておくわけにはいかなかった。

(チクショウ・・・せっかくオヤジが言ったフェイトの『友達』が現れてフェイトの心が開くかと思ってたのに・・・
あのババアがとんでもないことを言いやがって・・・それってフェイトのせいなのかよ・・・自分が望んだアリシアじゃないから嫌いだからって・・・
フェイトはモノじゃないんだよ!それでもババアの幸せを願って一生懸命やってきて・・・これがその報いかよ!)

アルフはフェイトの手を強く握り締めた

(そしてあのババア、最悪のタイミングでオヤジのことをフェイトに言いやがった・・・おかげでフェイトは・・・)

衝撃の告白にフェイトが大きなショックを受けているところに義輝の記憶を呼び覚まされたフェイトは二重のショックを受けて倒れてしまった。

ベッドに横たわるフェイトの目に光は無い、もはや生きる気力があるかどうかも怪しい。

アルフやなのはが何度語りかけても返事がない、まるで人形や屍の如く心を閉ざしてしまった。

「フェイトちゃんのお母さんを止めてくる。それが今私に出来ることだから・・・アルフさんはフェイトちゃんの側にいてあげて、
そしてフェイトちゃんが気付いたら伝えてほしいの。『待ってる』って」

そう言ってなのは時の庭園に向かった。

だが、今のフェイトには誰の言葉も届かない。

なのはの『待ってる』も伝えられない

もうアルフにはどうしていいか分からなかった

「オヤジ・・・助けて・・・・・・フェイトを助けて・・・」

とうとうアルフはその言葉と共に泣き出した

(もう限界だよ、アタシにはどうすればいいかわからないよ・・・オヤジ助けてよ・・・こんなときオヤジがいてくれたら・・・
オヤジが一言、声をかけるだけできっとフェイトは立ち直ってくれる・・・やっぱりあの時強引にでもオヤジを連れてくるべきだった・・・
いや、オヤジの言うとおりに久秀の挑発に乗らずに逃げてたら・・・戻りたいよ、あの幸せだった頃に戻ってやり直したい・・・)

アルフの脳裏に蘇るのは義輝がいた幸せを噛み締めていた頃の記憶―――


「おいしいかね、フェイト?」

「うん、お父さん」

廊下の縁側で義輝の膝の上にすわり義輝の用意した饅頭を頬張るフェイト

最近では義輝に食べさせてもらう行為も恥ずかしがらずにねだるようになった。

そして、フェイトは『今日はこんなことがあった』とか『藤孝さんにこんなこと教えてもらった』とか

たあいもない世間話をする姿がアルフには微笑ましかった、いつまでもこんな日々が続いてほしいと。

「そう言えばフェイトに聞きたいがフェイトは武器をどこにしまっているのかね、気付いたらすぐに手に持っているがあんな大きな鎌を
どこから出てくるのか不思議でならないのだが・・・」

「鎌ってバルディッシュのことですか?それならここにありますよ」

そう言ってフェイトはそう言って三角形のアクセサリーのような形をした待機モードのバルディッシュを義輝の前に差し出した

「この小さいのがあの鎌のような武器になるのかね?」

「はい、でもお父さん。バルディッシュは武器ではなくパートナーですよ」

フェイトが笑顔で答える、その意味を義輝は理解できずに首をかしげる。

「バルディッシュ」

「Yes sir」

その言葉と共にバルディッシュがアックスフォームに変形する

「な、形が一瞬にして変わった・・・それに今の声は?」

ずいぶん慌てふためく義輝の姿にフェイトがくすくす笑う

「Hallo, General」(初めまして、将軍)

「なっ、武器がしゃべった?」

「だから、武器じゃなくパートナーです。お父さん」

「す、済まぬ・・・喋るということは意思を持っているというのか?」

「Jawohl, Herr General Ich wurde geschaffen, um Meister zu helfen」(はい、将軍。私はマスターを補佐するべく生み出されました)

「い、いったいバルディッシュは何と言っているのだ、余にはさっぱり言葉が理解できぬ・・・」

「はじめましてって挨拶しているんですが・・・じゃ、お父さんもわかるように言語を変えますね」

そう言ってフェイトは握っていたバルディッシュに指示をだした。

【これで私の言葉がおわかりになりますでしょうか、将軍】

「おお、これならばわかる。改めてこれからもよろしく頼む、バルディッシュ」

【こちらこそ、将軍。あなたのお陰でマスターは心からの笑顔が増えました、私からもお礼を言わせてください】

「私そんなに笑ってなかったかな?バルディッシュ」

【はい、何せ命令どおりに無理をするだけだったのですから笑顔が無くて当たり前でしょう】

「同感だね、フェイトはずっと無理ばっかりだったからね。ここでは心底楽しんでいるのが分かるよ」

「ここでの生活を楽しんでくれているのなら余も嬉しい限りだ、それにここはそなた達にとって自分の家なのだからな・・・」

「お父さん・・・」

バルディッシュ、アルフ、義輝の言葉にフェイトは心底幸せそうな笑顔を向ける。

この笑顔こそアルフとバルディッシュの望んだ光景だった。

「フェイト、アルフ、そろそろ花壇のお世話の時間・・・あら、お邪魔だったかしら」

義輝の母・慶寿院が部屋から現れた。慶寿院はフェイト、アルフと一緒に二条城の花壇の世話をしていたのである。

「あ、おばあちゃん。もうそんな時間なんですね、分かりました」

「フェイトはいいよ。アタシがやっとくから。もっとオヤジと一緒にゆっくりしていなよ」

「ううん、そういうわけにはいかないよ。私のお城での仕事なんだからちゃんとやらなきゃ」

フェイトは義輝の膝から飛び降りた

「それじゃお父さん、私おばあちゃんと一緒に花壇の世話に行って来ます」

「うむ。それとフェイトよ、済まぬがバルディッシュと話がしたいのだがよいか?」

「バルディッシュと?」

義輝が頷く、それを見てフェイトは少しためらった。

何せわずかな時間にせよバルディッシュを他人にあずけたことなんて
今まで一度もなかったからだ。

【将軍であれば私は構いません、マスターの御心のままに】

「そう。それじゃバルディッシュ、お父さんの相手をお願いしていい?」

【かしこまりました】

「それじゃお父さん、また後で!」

フェイトはバルディッシュを義輝に預けて慶寿院と一緒に花壇へ向かう、それを義輝は手を振りながら見送った。

アルフも後ろから二人の後を追う。だが、このときアルフには二人の会話で気になることばが耳に入っていた。

「さて、バルディッシュ。そなたに話しとは他でもない・・・ちと、万が一の時についてなのだ・・・」

【万が一?】

(ちょっと、万が一ってなんだよ・・・確かに先日の話しでオヤジの命が危ないのは聞いてたけど・・・何を話す気だよ?)

あまりに不吉な予感がしたアルフは聞き耳を立てようとしたが

「アルフ、どうしたの?早く」

「ああ、フェイト分かった。今行く」

結局このとき何を話したかは聞くことができなかった。
万が一のことなど義輝が話してくれるとは思えないしバルディッシュがフェイトと離れることなど
滅多にありえない。

結局何も聞けないまま義輝最期の日を迎えて今日に至っている。

アルフは今になって思い出した。

義輝の万が一とはひょっとしたらこういう事態に備えていたのでは?と。

幸いバルディッシュはフェイトから遠く離れた棚にキズだらけのまま置かれている。

フェイトを一目見やってからアルフはバルディッシュを手に取った。

「なあ、バルディッシュ。アンタ確かオヤジと二人っきりで何か話してたよね、何を話してたんだい?」

【将軍からマスターにあてた遺言状を預かりました】

「な、なんだって!そんな大事な物をなんだって今日まで黙ってたんだい!」

【将軍からはマスターが誰の声も聞かずに心を閉ざした時にお見せするよう厳命されております】

「頼むバルディッシュ、その遺言アタシに見せて!」

アルフが藁にもすがるようにバルディッシュに頼み込む

【マスター宛ての遺言です、マスターの前にあなたが見るのはどうかと・・・】

「フェイトの一大事なんだ、そんなことに拘ってるときじゃないよ。第一その遺言が今の状況にあっているかどうかも確かめないと。
もし万が一今の状況にふさわしくない言葉ばっかりだったらもう二度とフェイトは・・・だから頼むよ!」

【私が聞いた限りでは大丈夫だと思いますが・・・わかりました】

バルディッシュから部屋の壁に向かって映像が映し出された。
そしてその映像にはアルフが、フェイトが心底会いたい
義輝が烏帽子を被った狩衣(平安時代の貴族衣装)の姿で映し出されていた。



「・・・オヤジ」

義輝のフェイト宛ての遺言を聞いたアルフは口を手で押さえながらぽろぽろ涙を流していた。

(オヤジ・・・オヤジにフェイトを託したのは間違いじゃなかった)

アルフは再びバルディッシュを手に取った。

「バルディッシュ、オヤジの遺言は必ずフェイトに」

【わかっています】

バルディッシュをフェイトの傍らに置いたアルフは次にフェイトの頬に手を添える。

「あの子達が心配だから、アタシも手伝ってくる。そして・・・これからはフェイトの時間はフェイトが全部自由に使っていいんだから・・・」

そしてアルフも部屋を出て時の庭園に向かう

(大丈夫、フェイトは必ず立ち直る・・・オヤジがフェイトを救ってくれる!)

それは希望ではない、もはや確信だった。


後編へ続く
メンテ
一睡の夢、一時の温もり エピローグ 後編 ( No.2 )
日時: 2010/05/27 19:57:57
名前: 伏龍 

一睡の夢、一時の温もり
エピローグ『希望』 後編

部屋にはフェイトが一人取り残されていた。

(私・・・どうしたらいいの・・・たった一つの拠り所だった母さんに捨てられて・・・もう必要ないって・・・)

フェイトの脳裏には母の言葉が未だにこだまする「大嫌い」「もう必要ない」の言葉が・・・

(そして何より・・・私のせいでお父さんやおばあちゃんが・・・私に関わったから・・・私がいなかったらお父さんはあんな死に方せずに・・・
私、生きてる意味あるの?・・・もう、もう何もかどうでもいい・・・もう誰も傷つけたくない・・・傷つきたくない・・・)

もはや、フェイトからは生きる気力が失われつつあった。

【マスター、私は今こそあなたの親から託されたメッセージを伝えねばなりません】

「親?・・・母さん?・・・ううん、もういいのバルディッシュ・・・だって、母さんの気持ちはもう分かってるから・・・」

フェイトは天井を見つめたまま力なくつぶやく、もはや今更どうでもよかった。これ以上辛い言葉は聞きたくない、そんな思いだった。

【勘違いをなされては困ります、私がマスターの親と認めるのは私の創造者・リニス以外には将軍があるのみです】

(将軍?・・・・・・軍人だよね、将軍って・・・バルディッシュが知ってる軍人なんていなかったはずだけど・・・バルディッシュが将軍って呼ぶ人間って・・・まさか!)

フェイトの目に光が戻る、自分が知る限りバルディッシュが将軍と呼ぶ人間は一人しかいない。

「バルディッシュ、あなたが言う『将軍』ってまさか・・・」

【はい、将軍足利義輝公です】

「お願いバルディッシュ、お父さんのメッセージを見せて!」

【了解です】

バルディッシュから再び壁に向かって映像が映し出される。アルフが見たようにそこにはフェイトが今、最も会いたい父・義輝の姿が映っていた。

「わが娘、フェイトよ・・・」

「お父さん!」

思わず映像の義輝にフェイトが呼びかける

「わが娘、フェイトよ。願わくばこの遺言を永遠に聞く機会がこないことを願う」

「え?」

「この遺言を聞いているということは余は既にこの世におらぬということだ。つまりこれから先フェイトに何かつらいことがあったとき、
フェイトが助けを必要とするときに余はもう助けてやれぬということだ・・・それは父として何よりつらい」

「お父さん・・・」

フェイトの目に涙があふれる、自分を助けようとする義輝の気持ちが嬉しかった

「だが、最悪の事態を考慮せねばならぬ状況になってしまった今、こうして遺言を残さざるを得ない。この遺言を残している今の状況だが、
プレシアは余の宿敵・松永久秀と組んで余の命とジュエルシードを奪おうとしている」

(そ、そんな・・・お母さんと久秀が組んでいるのをお父さんはずっと前から分かっていたの?それを私は何も知らずにお父さんに甘えていたの?)

フェイトが罪悪感に苛まされる、自分だけが何も知らずに幸福を満喫していたことに

「そなたに黙っていたことは済まぬと思っている。だがこの話を聞けば心優しいお前の事だ、一人でプレシアを説得にゆくであろう」

その義輝の言葉にフェイトは頷いた。当然だ、そうと知っていれば愛する母と父の戦いをどんなことをしても止める。

「そんなことをすれば絶対にフェイトは帰ってこない・・・いや、プレシアが帰そうとはすまい。それが予測できたからお前には話さなかった」

(な、何で?)

フェイトは疑問に思いながらも次の義輝の言葉を待った。

「プレシアはフェイトを大事に思っているわけではない、余の側にいてそなたに歯向かうのを恐れてそなたを強引に手元に置くだろう。
むろんフェイトには母たるプレシアに歯向かう考えがないのは分かっているつもりだがプレシアはそんな気持ちは理解しておらぬだろう。そして・・・
フェイトには済まないがプレシアはそなたを道具としか見ておらぬように思えるのだ。そなたに向ける目が嫌悪と憎しみしかないのだ」

(もう、このときのお父さんは一目会っただけで母さんの気持ちを見抜いていた・・・)

「だが、今の時点では余が何を言っても信じてもらえぬであろう。何せ態度と気配だけでの想像だから証拠は何もない。しかし、余の想像が正しければ
ジュエルシードを集め終わったときにそなたはプレシアによって捨てられるであろう・・・プレシアが改心しなければ」

現実には義輝の想像通りになった。ジュエルシードを集め終わったときにプレシアは全ての真実を話しフェイトをあっさりと捨てた。

「もし、そうなった場合はフェイトよ、そなたはおそらく全ての言葉を拒絶するだろう。そなたにとっては母に認められることが人生の全てだったのだから・・・
そのときはアルフやバルディッシュが何を言っても聞いてくれないだろう・・・だが、そなたに父から送りたい言葉がある」

次から次へと義輝の想像があたって愕然とするフェイトだが義輝の次の言葉が閉じたフェイトの心を動かす

「フェイトよ、そなたはそなたであり誰がなんと言おうとこの足利義輝の娘である。そしてそなたの人生は誰の物でもない、そなただけの物だ!」

(!)

「母親に捨てられてそなたの人生が終わるわけではない、むしろそなたの人生はそこから始まるのだ」

(お父さん・・・)

「お前を束縛する権利は誰にもない。それは生みの親であるプレシアとて例外ではない。人の一生など一度きり、
その一回の人生を人は誰でも自分の人生を謳歌する権利があるし自分のしたいことをする権利がある、ただ他人を踏みつけにして自分だけが
人生で贅沢をするのは論外ではあるが・・・」

フェイトは目に涙を浮かべて黙って聞いていることしかできなかった。

「母に捨てられることを前向きに捕らえよ、むしろそなたの人生は誰の束縛も受けなくなるのだ。お前は初めて本当に自分のやりたいことを・・・
自分のなすべきことを見つけられる好機と考えてほしい、そなたは次元世界を自由に渡り歩くことが出来るのであろう?余にも想像のつかぬ
広い世界で数知れぬ人と出会うことが出来るのだろう?ならばその中にはそなたを呼ぶ者、そなたに手を差し伸べてくれる者、喜びも悲しみもわかちあってくれる
そなたの『友』となってくれる者が必ずいる。どうしていいか分からぬのならまず、その呼ぶ声に応えよ。そしてその者の話を聞き自分がどうしたいかを
考えるといい、広い世界を見る中で必ずそなたは自分の人生を、やりたいことを見つけられると信じている・・・」

フェイトは両手で口を押さえて声を押し殺しながら嗚咽をあげていた。もう、涙は止まることなく次から次へとあふれていた。

「本当なら余がいろいろな物を見せてそなたが本当にやりたいこと、大切なことをいろいろ教えて一緒にみつけてやりたいが・・・バルディッシュに託した
このメッセージを見るということはそれは叶わぬ願いになる。それはすごく心残りではあるが・・・」

「お・・・と・・・う・・・さん」

「そして忘れないでほしい、そなたを必要とする者。そなたの幸せを願う人は少なく共ここにいる。余や母上(慶寿院)、城の家臣達・・・そして
アルフとバルディッシュ。今ここで名を挙げた者達は皆、フェイトの幸せを願いそしてフェイトを必要とする者達だ、それを絶対に忘れないでくれ」

(そう、私は忘れていた・・・いや、忘れようとしていた。お父さん達を・・・そしてアルフやバルディッシュがいるのを忘れて母さんだけしか見ていなかった・・・
傷つくことを恐れて・・・私は・・・私は・・・)

「フェイト、過去を振り返るな。お前の人生には長く明るい未来があることを忘れないでくれ。心優しく、そして強いそなたならきっとこの言葉を理解して
新しい人生を歩んでくれるものと信じている・・・他にも言いたいことがあるのだがうまくよい言葉に表すことができぬ・・・だが、最後に一言だけ言わせてくれ」

再びフェイトが映像の義輝を見る

「フェイト、お前の父となれて余は幸せだったよ・・・そしてアルフ、きっとそなたもこの映像を見るだろう。お前一人にフェイトを守るつらい役目を負わせて
申し訳なく思っている。だが、必ず未来は開ける、そしてフェイトも分かってくれる。それまで今少しフェイトを守ってやってくれ・・・さらばだ」

義輝の映像は消えた。

「お父さん・・・お父さん・・・そこまで私のことを・・・」

フェイトは両手で顔を覆って泣いた

【マスター、将軍の思いを受け取っていただけたでしょうか?】

「バルディッシュ・・・」

【将軍は最後までマスターのことを大切に思ってくれました、このメッセージを託されたときも『万が一を考えてだ、だからといってたやすく死ぬつもりはない』
とおっしゃっておられました。あの時、死が間近に迫っている時でさえ将軍は死ぬことを考えずに最後まで共にマスターと一緒に生きることを考えておいででした。
それに比べてまだマスターは生きています、将軍の言った未来がまだあります】

フェイトはそれに答えずバルディッシュが喋るのを待っている

【私も将軍と同じ気持ちです。マスターに自分の人生を思いっきり生きてほしい。私はその手助けをするために生まれたのです。そしてまだその手助けは
始まってもいません】

「私の・・・いや、私達の全てはまだ始まってもいない・・・」

【そして将軍の言われた通りに現れました、マスターを呼ぶ方が・・・マスターに手を差し伸べようとする方が】

そしてフェイトはモニターの画面を見る、そこには時の庭園内で魔導傀儡兵と戦っているなのはとアルフの姿が映し出されていた。

「・・・そうだ、あの子・・・。何度も何度も私の名を呼んでくれた・・・お父さんが言ったように・・・私は・・・」

そしてフェイトは再びバルディッシュを手に取る

【マスター、行きましょう、マスターを待つ方々のもとへ。そして始めましょう、マスターの新しい日々を・・・get set!】

バルディッシュが起動する。

「・・・そうだよね、お前だってこのまま終わりたくないよね、バルディッシュ」

【recovery】

その声と共に傷ついたバルディッシュがみるみる修復されてゆく

「もう大丈夫だよ、お父さん。私は一人じゃないことがわかったから・・・だからうまくいくかどうかわからないけどやってみる
今までの自分を終わらせて・・・そして、新しい自分を始めるために・・・バルディッシュ、力を貸してくれる?」

【Yes sir!】

「ありがとうバルディッシュ、行くよ!」

もう、フェイトの目に涙はない。彼女の時間はようやく動き出した。





そしてフェイトは自分を待ってくれるなのは達と共に過去を終わらせる。

最後、フェイトの差し出す手をプレシアは拒否した。

(もう、何もかも遅いのよ・・・。そして人はやっぱりあなたのように強く生きることは出来ないのよ・・・義輝)

過去ではなく未来を自分に見させようとした義輝やフェイトへのプレシアが示した最後の抵抗だったのか・・・

あるいは後悔と罪悪感からくる拒否なのかはそれは彼女のみしか知る由もない・・・






side なのは

私は高町なのは、私立聖祥大付属小学校3年生の普通の女の子・・・のはずだったけど。

ある日フェレットのユーノ君と知り合ったことで私の日常は大きく変わった。

レイジングハートと呼ばれるデバイスを持たされて突然ながら魔法少女になってしまいました。(誰、魔砲少女なんて言うのは・・・あとで『お話』しようね・・・)

そのユーノ君のお手伝いでジュエルシードを集めているとき、一人の少女に出会いました。

彼女の名はフェイト=テスタロッサ。

彼女・・・フェイトちゃんも私と同じようにジュエルシードを集めていました。

何故、ジュエルシードを集めているかは話してくれませんでした。だから、何度もぶつかりあって、お互いの思いをぶつけて・・・
ようやくフェイトちゃんと分かり合える、そう思ったときにフェイトちゃんのお母さんが言った衝撃の事実・・・。

それを聞いたフェイトちゃんは呆然として誰の言葉にも耳を貸さず、さらには『お父さん!』と泣き叫んで・・・。

私にはどうしていいかわからず、フェイトちゃんが来ることを信じて自分に出来ることをやるしかありませんでした。

そしてフェイトちゃんは来てくれました。

フェイトちゃんを立ち直らせてくれたのはフェイトちゃんのお父さんだったそうです。

そして私は今回の事件で重要参考人として連れて行かれるフェイトちゃんからあるお願いをされたのです。

「お父さんのお墓を探してほしい」

信じられなかったのですが、フェイトちゃんはジュエルシードを探して過去の日本へ跳んだそうです。

そこで出会ったのがフェイトちゃんのお父さん、名前は足利義輝さんで征夷大将軍という高い地位についていたそうです。

そのお父さんはフェイトちゃんを庇って死んだと言います。フェイトちゃんが何故お父さんの名を呼んで泣き叫んだのかようやくわかりました。

そして、フェイトちゃんのお母さんが言うには墓も何も残されていないと教えられたそうです。

本当にそうなのか?もし、そうだったらあまりにも悲しすぎる・・・。

フェイトちゃんはお父さんのお墓があるならお参りしたい、と言っていました。

「ごめんね・・・名前だけしか手がかりがなくて・・・でも、お父さんのお墓があるならお参りしたい」

「わかった、任せてフェイトちゃん。私が・・・私が絶対見つけてくる、フェイトちゃんのお父さんのお墓」

フェイトちゃんはただお母さんの願いを叶えるために一生懸命だったとはいえ一歩間違えれば次元断層さえ引き起こしかねなかったため
無罪放免というわけにはいかない、というのがクロノ君の言葉でした。

本来なら次元犯罪は数百年単位の幽閉が普通なのだが、フェイトちゃんは事実を知らないままお母さんの命令に従っただけだったということもあって
クロノ君が必ず無罪になるよう動いてくれるという言葉にほっとしました。そんなことになったらいくら何でもフェイトちゃんがあまりにも・・・。

その間に私はフェイトちゃんのためにできることをしようと思いました。

家に帰ったらみんな温かく出迎えてくれました。アリサちゃんやすずかちゃんも笑顔で迎えてくれて本当に嬉しかった。

特にアリサちゃんは私のことを心配してくれてあんなに本気で怒って・・・何も理由を聞かずとも笑顔で迎え
てくれて本当に嬉しかった。

フェイトちゃんともこんな風にお互いに笑顔で話せるようになれたらいいな、と思いました。

そしてさっそくフェイトちゃんのお父さんのお墓を探すべくアリサちゃんやすずかちゃん、お父さんやお母さんにも聞いたのですが・・・

「足利義輝?なんだ、なのは。お前も剣について学ぶ気か?」

お兄ちゃんが凄く物珍しい目で私を見ています。

「ふぇ?」

「彼は歴代の征夷大将軍の中でも1、2を争う剣の達人だよ。彼の事を調べたいなんて父さん、少し驚きだな」

「何にしてもなのはが剣の事について聞いてくるなんて珍しいわね、何かあったの?」

「うん、実は最近できた海外のお友達がその人のお墓を探してて・・・征夷大将軍って偉い人だったって聞いているから知ってるかなって思って・・・」

ごめんなさい、まだお友達にはなっていないんだけど・・・。

「ごめんなさい、お母さんは詳しく知らないわ・・・」

お母さんがすまなそうに言いました。

「お父さんも詳しいことは知らないな・・・ただ、彼は戦死してその城も焼け落ちているからお墓はないんじゃないのかな?
それに戦国時代に限ってならともかく教科書とかにも出てこない人だからね・・・」

お父さんの言葉はあまり有名な人じゃないような言い方でした、残念ですけどこれ以上は分からないようです。

そして学校でアリサちゃんとすずかちゃんに聞くことにしました。

「足利義輝?なのは、あんたも巷の『歴女』になろうとしてるわけ?それにしても随分聞かない武将に興味を持つのね」

「ふぇ?」

「私も知らない名前だよ、なのはちゃん。征夷大将軍で有名なのは徳川家康とか源頼朝くらいだし・・・」

「そうなんだ・・・」

「また、どうしてその人のお墓を?」

「う、うん・・・実は外国のお友達がどうしてもその人のお墓を見つけてお参りしたいって・・・」

「お友達?」

「うん、最近出来た子なんだけど・・・」

また言ってしまった。ほんとはまだお友達になっていないんだけど・・・他に言葉も思いつかないから・・・ごめんね、フェイトちゃん。

「・・・いいわ、パパに頼んで探してあげる。でも、ひとつだけ条件があるわ」

「条件?」

アリサちゃんがやや怖い顔で私を睨んでいます、また怒らせちゃったのかな?

「・・・その子、私達にも紹介して。それが条件よ!」

「・・・うん!」

にっこり笑って条件を言うアリサちゃんを見てほっとしました。

「今のなのはの顔・・・あのときと同じ顔してたから。たぶん詳しい理由は全部言えないんでしょうけど・・・なのはのこと、信じることにしてるから
それが友達でしょう、ね、すずか?」

すずかちゃんは笑顔でにっこりと頷いてくれました。

ありがとう、アリサちゃん、すずかちゃん・・・。私、二人と友達になれて本当によかった。必ずフェイトちゃんの事、紹介するね。




それから数日後の早朝に私の携帯が鳴りました。

クロノ君からの電話でフェイトちゃんが裁判のために身柄を時空管理局の本局に移されること、

そしてその裁判でほぼ確実に無罪になることが決まったのです。

これほど嬉しいことはありませんでした。

そして、フェイトちゃんの身柄が移されるとしばらくは会えないとのことなので、今のうちに会える手配もしてくれるそうなのです。

フェイトちゃんが会いたいと言ってくれてクロノ君が少しだけ時間を作ってくれたのです。

フェイトちゃんから会いたいと言ってくれたことは凄く嬉しかったので、迷うことなく私もOKの返事をしました。そして・・・

「あのね、クロノ君。もうひとつお願いがあるの・・・実は・・・」


私はクロノ君にお願いしてユーノ君と一緒にフェイトちゃんとアルフさんをある場所に連れて行きました。

「ここは・・・」

「京都だよ、かつては京の都と呼ばれてた町・・・」

「!」

クロノ君に頼んで転送してもらった場所にフェイトちゃんが驚きました。無理もありません、ここはフェイトちゃんにとって
一番楽しい思い出と一番つらい思い出のある場所だから・・・

「どうしてここへ・・・」

「見つかったの、フェイトちゃんのお父さんのお墓」

「本当なの!」

「嘘じゃないよね、本当にオヤジの墓があるのかい?」

フェイトちゃんはまるですがるような表情、そしてアルフさんにいたっては今にも掴みかからん勢いですこし驚きました。

でも、二人にとってこのお父さん・・・足利義輝って人がどれだけ大切なのか凄く分かります。

急かす二人を落ち着かせて私は京都の相国寺という大きなお寺さんに向かいました。

アリサちゃんの話しではフェイトちゃんのお父さんのご先祖にあたる室町幕府三代将軍、足利義満という人が立てた寺で
この一角にフェイトちゃんのお父さんのお墓があるそうです。

ちなみに有名な金閣寺を建てたのがその足利義満だというのも話してくれました。

他にもこの相国寺には義満さんの子供さん達や銀閣寺を立てた室町幕府八代将軍、足利義政という人の墓もあるそうです。

とにかくフェイトちゃんのお父さんの一族が深く関わっているお寺さんだということをアリサちゃんが話してくれました。

本来、フェイトちゃんのお父さんのお墓は非公開で誰もお参りできないとの事だったのですが、そこはアリサちゃんがアリサちゃんのパパに
お願いして私の名を出せば特別にお参りさせてもらえることになっていたのです。(どうやって頼んだかかは聞かないほうがいいってアリサちゃんが言ってました)

アリサちゃんには本当にいくら感謝してもしきれないくらいです・・・当分、頭が上がりそうに無いなと思う私でした。

そしてお寺の偉いお坊さんが案内してくれた先にそれはありました・・・静かな森の片隅にひっそりと立つお墓。

「あちらのお墓が足利義輝公のお墓になります」

「あ・・・あれが・・・」

フェイトちゃんの目に涙が浮かんでいます、たぶんいろいろな思いがフェイトちゃんの中を駆け巡っているんだと思います。

アルフさんも同じような表情でした。

「お坊さん、申し訳ありませんが隣に立っている小さなお墓は誰のですか?」

クロノ君が隣に立つ小さなお墓に気付いて質問しました。

「ああ、あちらは義輝公の娘さんのお墓と言われています」

「ええっ!」

全員が驚きの声をあげました、無理もありません。義輝さんの娘さんっていったらそれはフェイトちゃんを指すことに他なりません。

なんで生きているフェイトちゃんのお墓があるのでしょう?

「まあ、驚かれるのも無理はありません。義輝公に娘さんがいたということは資料にも残っていないのですから」

「それではどうして?」

訊ねたのはユーノ君でした、みんなも注目しています。

「義輝公の家臣に細川藤孝公という方がいらっしゃいましてね、この人は偶々別の仕事で義輝公の側から離れていたために松永久秀公が暗殺に来たときに
難を逃れることができたのです。その後、織田信長公に仕えることになった藤孝公は京で必死になって探していたのが義輝公の娘だというのです」

フェイトちゃんが目に涙を溜めながら聞いています、
フェイトちゃんとアルフさんにとってかけがえのない家族の人だって聞いています。

「その娘さんは細川家の資料には出てくるのですが名前も見当たらない、ましてその他の資料には全く見当たらないこともあって本当にいたかどうか
怪しまれています。一説には当時南蛮と呼ばれていたヨーロッパ人の娘だったとも言われていますが詳しいことはわかりません」

この話を聞いて私はこの小さいお墓がフェイトちゃんのお墓だと理解しました、金髪のフェイトちゃんならヨーロッパの人間と間違われてもおかしくありません。

「ほうぼう探して消息の得られなかった藤孝公は娘も義輝公と共に死んだものと思い。せめて慕っていた父の隣にということでここにお墓を作ったとのことです。
このお寺には『お二人を守ることができず申し訳ありません』と己の罪の許しを請う謝罪の文書も残されています。あと同じ文書が織田信長公を討ったことで
有名な明智光秀公の物もありますよ」

「そうだったんですか・・・」

フェイトちゃんやアルフさん、クロノ君、ユーノ君、みんななんともいえない表情です。

「それでは、ごゆっくり。私は事務所にもどっていますので・・・」

そう言ってお坊さんはお寺の事務所に戻っていきました。

「藤孝さん・・・光秀さん・・・ずっと私のことを心配してくれていたんですね・・・ありがとう・・・」

「ごめんよ、藤孝の旦那に光秀の旦那・・・何も言えずに・・・」

フェイトちゃんもアルフさんも泣いていました、自分達が去ったあとも心配してくれてたことがよほど嬉しかったんだと思います。

私も泣きそうです、時代が違っていても今も繋がる絆・・・私もフェイトちゃんとそんな強い絆を築けるのかな?ううん、築きたい!

そして私達はフェイトちゃんのお父さんのお墓の前まで進みました。

その墓にはちょっと読みにくい文字が彫られていました。あとでお坊さんに聞いたら「光源院融山道圓」死んだ後につけられる名前だったそうです。

「お父さん・・・ごめんなさい!私、お父さんやみんなの事を忘れないって言っておきながら・・・あの日までお父さん達のことを・・・」

「フェイト・・・」

フェイトちゃんが手を合わせながら泣いて謝っています、それをアルフさんが宥めています。

「自分が傷つくのが怖くて・・・母さんだけしか目に入らなくて・・・酷いよね、あんまりだよね・・・お父さんは自分が死んだ後も私のことを気遣ってくれていたのに・・・
アルフやバルディッシュがいることも忘れて・・・私は取り返しのつかないことを・・・本当にごめんなさい・・・」

「もういいよ、フェイト!オヤジはもう許してくれているよ、あれだけフェイトやアタシの事を心配してくれてしかもフェイトがアイツにしか目がいかないのも
分かってくれていたんだ。怒っているわけないじゃないか・・・むしろ心配してると思うよ、まだ止まったままじゃないのかって」

「アルフさんの言うとおりだよフェイトちゃん、遺言でも言ってたじゃない。未来があることを忘れないでって!」

私もアルフさんと一緒にフェイトちゃんの肩をたたいて宥めます。

「フェイト・・・今の僕にはうまい言葉が見つからないけど・・・過去を変えることはできないけど未来なら変えられる。だから前を向いて生きていこう、
それが君を最後まで心配してくれたお父さんへの何よりの償いだと思うよ」

「僕もその意見に賛成だよ」

クロノ君、ユーノ君も一緒に励ましてくれます。いつの間にかフェイトちゃんの周りをみんなで囲っていました。

まるでフェイトちゃんは一人じゃない、というように。

「うん・・・ありがとう、みんな」

フェイトちゃんが泣き止んで少し笑顔を見せるとみんなで手を合わせて義輝さんの冥福を祈りました。

(フェイトちゃんのお父さん。初めまして、私は高町なのは。フェイトちゃんのお友達になりたいと思っています。フェイトちゃんのお父さんが言っていた
喜びも悲しみも分かち合える友達になれたらいいな、と思っています。私、フェイトちゃんを一人にしません。これからもずっとフェイトちゃんと一緒に
歩んでいきたいと思っています。だから・・・安心してください。そしてこれからもフェイトちゃんのことを天国から見守っててあげてくださいね)

私はフェイトちゃんのお父さんの前で誓いました、そうこれからもフェイトちゃんとずっと一緒だって・・・




その後、海鳴公園で二人はお互いの名を呼び合い、そして一時の別れを告げる。

再び出会うことを約束して。




それからしばらくの時を置いて―――

(お父さん、もう私は大丈夫・・・ちゃんと前へ向かって歩いていけるよ。だって今の私にはアルフやバルディッシュだけじゃなく、クロノやユーノ、
リンディさんやエイミィもいる・・・何よりなのはがいてくれるから・・・だから、大丈夫だよ)

今、フェイトが手に取っているのは義輝の写真だった。バルディッシュに残されていたホログラフィーを写真にして
自分の部屋に飾っている。その写真の隣には二つの形見の品、初めてプレゼントされたかんざしと血染めの赤い布切れが置かれている。

「フェイトさん、なのはさんが迎えにきたわよ」

「あっ、はい。今いきます」

リンディの掛け声にフェイトが反応する。

そう、フェイトはなのはと同じ海鳴町に住んでいる。裁判で無罪が確定したフェイトは今は嘱託魔導師となって時空管理局の仕事を手伝っている。

今回、ある任務のために保護者となってくれたハラオウン一家と共になのは達の世界にやってきたのだ。

そして、なのはと一緒の学校へも通うことになる、ビデオメールでやりとししたアリサやすずかともすぐに打ち解けた。

フェイトは確実に新たな人生を歩んでいる。

「それじゃ行ってきますね、お父さん」

フェイトは義輝の写真を戻して部屋を出ようとする。

(行っておいで、フェイト)

「!」
はっとなってフェイトは後ろを振り返った、義輝の声が聞こえたような気がしたのだ。

だが、振り返った先には誰もいなかった。

「気のせいかな・・・ううん」

フェイトには見えていた、自分を見送ってくれる義輝と慶寿院、そして義輝の家臣達が自分を見送ってくれるのが・・・。

「フェイトさん、なのはさんが待っているわよ〜」

「ごめんなさい、今行きます」

フェイトの人生はまだ始まったばかり、一時の悪夢を乗り越えて本当の夢と温もりを掴むためにさらに進んでゆく・・・。




一睡の夢、一時の温もり 完
メンテ

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