このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment
トップページ > 記事閲覧
魔法少女と黒き戦士
日時: 2010/02/03 21:46:27
名前: 八神ふ〜か  < >

この小説は、リリカルなのは(とらいあんぐるハート3微クロス)+マスクドライダー概念な転生オリ主再構成作品となっております。

息抜き・気分転換的に書いているので更新は不定期になると思われますw

以上の事を踏まえて、それでもOKと言う寛大なお心をお持ちの方はご一読下さいませ ^^)



※2月16日記事修正
 プロローグを序章オープニングに差し替え。
 旧プロローグを第1話と併合。
 所々修正加筆


メンテ

Page: 1 |

序章「誕生」 オープニング ( No.1 )
日時: 2010/02/03 21:47:56
名前: 八神ふ〜か 

魔法少女リリカルなのは 「魔法少女と黒き戦士」


序章「誕生」 オープニング








仄暗い森の中、眼前の薄闇からゆっくりとこちらに近づいてくる巨大な蜘蛛に似た怪物。




歪に並んだ小さな複数の紅い目は狂気を孕んでぬめりと光り、薄く開かれた顎には鋭角なラインを刻む牙が見え隠れしている。




そんな本能的に恐怖を感じる存在を前にしながらも、俺は今かつて無いほどに興奮していた。




『Please image, and the appearance of a strong armor that defends you. 』(イメージして下さい、貴方を守る強き鎧の姿を)




それは現在進行形で命の危機に晒されているからじゃない。




『And, originate, and the key code that becomes a start passing. 』(そして発してください、起動パスとなるキーコードを)




かつてその雄姿に魅せられ、その強さに憧れ、子供心に自分もああなりたいと夢見た存在。




いつしか大人になる事で夢は夢でしかないと認めるしかなくて、




『Standby Ready』




けれど憧れだけは持ち続けていた――そんな存在に俺はなろうとしているからだ。




その確かな証は、腰に装着している機械仕掛けのベルトただ一つ。




――さぁ始めるか、俺自身が紡ぐ唯一無二の物語を――






「変 身!!!」




『Complete.』




全身を黒い光が包み、そして収斂するかの如く凝縮された黒が次々と形を変えて身体を守るボディースーツや装甲と化して行く。




刹那の後そこに立っていたのは、翼を模した金の角飾りに赤く大きな目を持つ異形の戦士。




それがこの世界に初めての「仮面ライダー」が誕生した瞬間だった。







>NEXT#1

メンテ
序章 #1 ( No.2 )
日時: 2010/02/05 02:40:09
名前: 八神ふ〜か 




あてんしょん


正人「初っ放から数話は回想編だ、予定では原作開始まで少しかかるらしいぞ。」

ふ〜か「現在序盤のプロットを脳内で鋭意組み立て中です。」

正人「それって書いてる時は行き当たりばったりなだけなんじゃねーか?」

ふ〜か「余計なこと言うと今後不幸な出来事があるかも、と予言してあげよう。」

正人「酷ぇw」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



魔法少女と黒き戦士


序章「誕生」 #1





うぃっす!俺、影宮正人(かげみやまさと)


私立聖祥大付属小学校の2年生やってる極々普通の転生者だ!





え?転生者のどこが普通だって?


そんなの今更気にするようなことじゃないだろ? 似たような体験してるヤツなんてそこかしこの二次創作にいるじゃないか。


ま、俺もご多分に漏れず、前世でバイクで事故って気が付いたら今の自分に転生してたってワケだ。


たった20年の短い生涯だったし、向こうの家族とか友達とか心残りが無い訳じゃないけど、こうなってしまってる以上はどうしようもないしな。


ウチにはまだ兄貴もいるし、友達もそんなに多くなかったから今頃はそれほど悲しんでるヤツはいないだろ。





とまぁ、俺の前世云々の話はこの辺でいいとして、転生直後から今に至るまでの経緯を軽く語るとするか。





――目覚めたら赤ん坊になってた時は流石にパニックになった。


そりゃそうだ、突然あんなイミフな状態になってて落ち着いていられたらソイツはよっぽどの大物か事情を最初から理解してるかのどっちかでしかない。


実際俺も前世ではオタク系な人間で、アニメやゲームの二次創作小説とか愛読してたから「これってもしかして転生ってヤツか?」と思い当って落ち着けたのだ。


落ち着くまでの間、眼を見開いてキョロキョロと挙動不審な行動を取っていた赤ん坊がいたのは推して知るべし。





転生、と言ってもどうやら俺は巷の転生物の様な主人公属性とは違ったらしい。


神様や死神のうっかりミスで死んでお詫びに力をもらったとかでもないし、目覚めたら怪しい研究所のシンリダーの中でしたみたいな特殊な生まれでもなければ、銀髪だの紅い瞳だのオッドアイだのと言った如何にもな容姿をしているワケでもない。


生まれつき特別な力を持ってたりしない・・・と言うとちょっと嘘になるが、それについてはいずれ述べる機会もあるだろうからとりあえず置いておこう。





ともかく極一部を除けば普通の家庭に生まれた事に、当初は残念な気持ちも多少無くはなかった。


やっぱそこはチートな能力で俺TUEEEEしてみたかったし、容姿端麗でハーレムなんてのも憧れるのはオタクなオトコノコとしては当然の野望だし!


と、息巻いた時期もありました。(主に3歳くらいの時に。)


結局無い物ねだりなんぞしてもしょうがない、と諦めたけどな。


それに前世での20年の経験や知識、これだけでも期間限定のチート体験はできる(笑)





等としょーもないことを考えながら幼少期を過ごしていた俺だったが、その後自分の人生の大きな転換期を予感させる事実を知る事になった。


それは、自分の住んでいる街の名前が「海鳴市」だと判明したのだ。


思わず「リリなのかよ…」と小声で呟いてしまったが、奇しくもそれが影宮正人として生を受けてから初めて発した言葉だった、ぎゃふん。












この世界に転生して3年、世は全て事も無し……要するに平和だったって事だ。


ここが海鳴市と知った時は思わずリリカルなのはの世界かと思ったが、もしかしたら元になったPCゲーム「とらいあんぐるハート」シリーズの世界の可能性もある事に気付いた。


ま、気付いた処で絶賛幼児進行形な俺には自分で積極的にどっちなのかを確認するなんて出来る筈も無い。


なのでガキはガキらしく子供向け番組なんぞを見たり、適当に絵本とかを読んだりして大人しく手のかからない子供を気楽に演じていた。


課題に追われる事も無く、バイトに汗水たらす事も無い、好きなだけゴロゴロしてても怒られない、最高だね、幼児!





なんて呑気に過ごせたのは4歳まででした。


それから聖祥小学校入学までの間は何か知らないがこれでもかと不幸の連続だった。



5歳の時母さんが病気で亡くなるわ、突然父さんは「冒険野郎の血が騒いだ!」とか言って旅に出るわ、プチ一家離散だよなこれ?


そしてこれが最もショックだったんだが、この世界には前世で俺が最も愛した特撮変身ヒーロー「仮面ライダー」と言う作品、それが存在しないと判明した事だ。


あの時はマジ凹んだね、リアルで orz する日が来るとは思わなかったぜ。


落ち込み過ぎて1週間くらい部屋の隅で歴代ライダーシリーズの主題歌メドレー小声で歌っちゃったからな。


流石に父さんもドン引きだった、今では反省している。



は?母親の死よりライダーの方がショックなのはおかしいだろうって?


そりゃ母さんが死んだ時は悲しかったさ、でも寂しくは無かった、その理由は前に言った「特別な力〜」に関係するので近い内に語る事になると思う、期待せずに待っててくれ。



父さんに関しては、俺を預かってくれてるじーちゃん曰く「若い頃から冒険好きの放蕩馬鹿息子」らしい。


ここしばらくで一番故郷に滞在した時間が長いのは母さんと結婚してから今の旅に出るまでの間だそうだ、どんだけなんだよ。


それと父さんがどんな仕事してるのか、俺もじーちゃんですらも知らない、なのに毎月キッチリと十分な仕送りが送られてくる……謎だ。


そんなちょっと変わった父さんだが、俺は嫌いではないし親子仲も悪くない。


父さんが母さんの事を本当に愛してたのは間近で見ていたから間違いないし、俺の事も同じくらい大事に想ってくれているのも知ってる。


だから旅に出たのだって父さんなりの寂しさを紛らわせる手段なんだろうと推測してる。


でも一応まだ幼少と言える俺を置いて世界に羽ばたくのは如何なものかとも思わないでもないが、年の割にしっかりしてる(精神の経過年数的には至極当然な)息子を信頼してくれている…んだと思いたい。


ちょっと話が逸れたが、ここまでが入学までに起こった出来事のあらましだ。





そして時は流れ、いよいよ私立聖祥大付属小学校に入学する運びとなった。


流石は私立のエスカレーター式学校、お受験なんてありやがりました、無論余裕で合格。



入学式の日、桜並木の下校門を通りクラス分けが張り出された掲示板へと向かう俺は期待半分不安半分と言った心境だった。


それはやっぱりなのは達との邂逅があるのかどうかが気になっていたからだ。


ここに至るまでの過日に街を散策して翠屋があるのは確認済みなので、やはりとらハかリリなのの世界である事は確定なんだが、問題はどっちの世界なのか、と言う事だ。


正直に言えば前世では両方のファンだったし、折角この世界に転生したんだから出来る事ならば登場人物達にお近付きになりたい。


だがしかし! 悲しいかなこの身は平平凡凡に毛の生えた程度の一般ぴーぽー、選択肢を間違えよう物ならあっという間に死亡フラグが森と化す。


死の体験をもう一度、なんて真っ平御免だ。



なのでここでなのは以外の人物の有無が明暗を分けるとも言える。


とらハだった場合、なのはと仲良くなる事自体は問題無い、なのは以外の人物によっぽど深く関わらなければ危険に巻き込まれる事もまず無い筈だ。


でももし、リリなのだった場合……不用意にあの3人娘と親交を持つのはマズイ(汗


今の段階では何とも言えないが、万が一俺にもリンカーコアがあったりしたら仲が良いほど物語に巻き込まれる確率は高くなる。


チートなオリ主ならいざ知らず単なるモブキャラな俺が関わった処でどうにかなるとは思えん。


余り大々的には描かれて無かったが、リリなの世界では結構魔法関連による死者も出ているのだ。


安易な死亡フラグ乱立を防ぐためにもまずはどちらの世界か確認を。



――しかしこんだけ慎重になっておいて、これで実はなのは達とは同年代ではありませんでした、マル なんてオチだったらアホだな、俺。





掲示板の前に集まる俺と同じ新入生達を掻き分け、見渡せる位置まで到着。


どうやら各クラス男女別に名前を掲載してるっぽいな。


まずは自分の名前を探すべくA組の男子の名簿から順に目を通して行くとしよう……お、あった、B組か。


一応自分のクラスになのはが居るのか確認しとこうと、女子側の名前一覧の少し下に視線をずらす、するとそこには 高町なのは の名前が。



あったよオイ、クラスメイトかよ、どーすんの俺……って。


なのはがクラスメイトと言う事実に喜んでいいのか悲しめばいいのか微妙な感慨に耽っていると、なのはのすぐ下の名前が目に入り一瞬思考停止。


その後ギギギと軋んだ音がしそうな首を曲げて上の方を見、またも思考が停止した。


ここまで言えば分かるだろ……あったんだよ、あの二人の名前が……即ち



アリサ・バニングス&月村すずか



はーい、リリカルなのは世界で確定でーす、本当にありがとうござ(ry





こうして俺のスニーキング小学生ライフは幕を開けたのだった。











>NEXT#2











☆あ と が き

書き上げ読み返してみて思った事。何だか安定してない(涙

徐々に安定してくると信じるしかないw

次回から冒頭の時間軸(2年生)に追いつきます。





メンテ
魔法少女と黒き戦士 #2 ( No.3 )
日時: 2010/02/14 23:30:54
名前: 八神ふ〜か 




序章 #2





奇しくも3人娘とクラスメイトとなってしまった俺がまず心掛けた事、それは「極力目立たない様にする事」だった。


勉強は楽勝以前の問題だが、調子に乗って金髪おぜうさまに目を付けられるワケにもいかないのでテストの時などはワザと数か所空欄にしてやりすごした。


運動に関してだが、これはちょっと不思議な事が起こっていた。


記憶や知識を持ったまま転生した事による影響なのかそれとも別な要因か、明らかに年齢不相応な程に身体能力が上がっていたのだ。


ハッキリとは分からないが、前世で死んだ頃程度の――つまり成人男性位の身体能力が既に備わっているのである。


しかもそれが初期値っぽい事になってる様で、これから成長していけばちょっととんでもない事になるんじゃないだろうか…。


まさかの運動神経までチート体験出来ようとはw


しかしだ、目立たない様にする以上常に適当に手抜きしつつ運動しなければいけない訳で、これはこれで逆に気疲れが絶えないんだが、これも調子に乗って男子並みのハイスペックな運動神経を誇る紫髪お嬢様に注目されたくはないので頑張るしかなかった。


手抜きを頑張るって、ニュアンス的におかしな言葉だよな…。





そんなこんなで必死こいてどこぞの蛇兵士並みにコソコソと日々を過していたら、気が付けばクラスでもすっかり孤立して空気か幽霊かもかくやな存在になってしまっていた、じーざす。


確かに目立たない様にはしてきたが、だからといって友達が欲しくないとか思ってたのでは無い、断じて。


話しかけてくる子とかもいたし、仲良くしたそうに接してくれる子もいた。


だが何と言うか……正直今一つ噛み合わなかったのだ、ノリと言うか感覚的な物が。


多分それは正人の中身(?)である「俺」が原因なんだろう。


元々精神年齢が低かったのは自覚してるし、この身体に転生してからは肉体に精神が引っ張られているのも感じていた、が、それでも俺の本質は20台後半な大人のオタクであるのには変わりない。


どんなにガキっぽくても純粋で無邪気な本当の子供達とは違う、だから感覚的な部分で齟齬が生じているのだ。


それを感じ取っていたのか、段々と声をかけてくれる子の数は減り、程なくゼロとなった。


まぁ、前も数えるほどしか親しい友人はいなかったし独りでいるのは慣れてはいるんだが、流石にちょっぴり寂しい気もする…。


せめて共通の話題とかあればなぁ、…例えばライダーとかライダーとかライダーとか。


なんでこの世界にはライダーがないんだよぅ…あっちでは某光の国の巨人と双璧を成す2大ヒーローの一角だぞぅ…くすん。


と、いかんいかん、またネガティブになるトコだった。





独りと言えば、この頃の3人娘もそれぞれが孤立している状態だった。


席もバラバラだったし、何よりそれぞれが他人に対して壁を作っていた様にも見える。


ちなみに席だが1クラスに縦6列×横6列の36席あり、俺は窓際最後尾のベストポジション(昼寝的な意味で)なのはが廊下側から2列目最後尾、アリサが窓際の前から2番目、すずかが窓側から3列目の前から4番目、うむ、見事にバラバラだ。


3人娘と離れた席でラッキー、とか思いつつそれとなく様子を窺い続けているんだが、アリサは勝気で素直じゃない部分で周りから敬遠されているっぽい、すずかは物静かでとにかく大人しい、と言うかオドオドしてる感じか? なのはは二人に比べればマシに見えるがどことなく一歩を踏みこめないでいる様子、迷惑かけるんじゃないかとか不安なんだろかね。


原作での仲睦まじい3人の姿を知っているだけに、見ていて何とかしてやりたいとか思うものの、例の喧嘩イベントさえ来ればその後は親友同士となることは確定事項だ。


だから口も手も出す必要は無い、暖かくそこらの樹の陰からでも見守ってればいい。





……って、そう思ってたんだが、なぁ? 


なんでこーなるの…。



「あのっ、あの、すいません二人を止めて下さい…!」


目の前には涙目で必死に訴えかけてくるきれいなウェーブのかかった紫セミロングの少女、その背後の中庭に面している場所で取っ組みあっている金髪セミショートと茶髪のツーテールの二人組。



間違いなく例のイベントですねわかります。


そりゃいつ発生するかなんて原作でも語られて無かったし、こんな重要なイベントを生で見れるなんてちょっぴり嬉しいけどさー…。


何で偶々偶然偶発的に通りががった俺が巻き込まれそうなの? いやもう声掛けられた時点で巻き込まれてるか…。


流石にこの状況で無視する程薄情では無いが、なるべく印象に残りたく無いんだよなぁ。


「あの……」


おっと、考え込んでる場合じゃなかったな、すずかが本格的に泣きそうだ。


しかしここで俺が仲裁して止めるのは簡単だが、それだと俺にまで友達フラグが立つ気がする、せめてそれだけは回避せねば。


俺は努めてクールなフリをしつつ、オロオロしているすずかに話しかけた。



「原因は?」


「え?」


涙目でキョトンとするすずか、ヤベ、萌える。



「こうなった原因、あるんだろう?」


「あ…ええと、私のカチューシャをバニングスさんが取り上げて返してくれなくて…そしたら、高町さんがそれを見てバニングスさんを叩いちゃって、そのままケンカに…」


「なるほど、バニングスが発端か…そして高町が見かねて出て来た、と。 でも月村も最初にハッキリと嫌だって言えなかったんじゃないのか?」


「ぅ…」


まるで見ていたかの様に正確に指摘され(見たんじゃ無く「知ってた」んだが)シュンとなるすずか。



「図星か、ならここでハッキリと自分の意思を伝えなきゃ今後も同じ様な事があるかも知れないぞ?」


言外に自分でやれと突き放しているのだが、決してイジワルとかで言ったのでは無い、無いったら無い。


やはりここはすずかがやるべきなのだ、そうでなければ最悪3人が友達になるキッカケを潰すかもしれん。


それにこれなら俺にあんまり好印象は持たないだろう。


死亡フラグ回避の為とは言え、ちょい切ないが…。


まぁ何にせよここで背中を押す位はしたっていいだろう。



「ケンカ、やめて欲しいんだろう? だったらしっかりとそれを言えばいい。」


ホラ、と軽くすずかの背中を叩いて促す。


逡巡していたすずかがやがてゆっくりと今だに掴み合いをしている二人に近付き、意を決したように息を吸い込むと――



「やめてっ!!」


と予想以上に大きな声を発した。


あれだ、普段があんまり大人しいから今のはちょっと驚いた。


なのはとアリサも唖然とした顔ですずかを見たまま固まってるし。


結局それで二人とも落ち着いたのか掴み合っていた手を離して気まずげに佇んでいる。


……ま、少しだけアフターケアをサービスしますかね。


俺は立ち尽くす二人に歩み寄ると取っ組みあいであちこち跳ね回っている髪をそっと撫でるように直してみる。



「あ…」


「……」


俺の突然の行動に対処できなかったのか、なのはもアリサも驚きつつも動かずじっとしていた。


むぅ、二人とも髪質良いな、サラサラだわ。


乱れた箇所もじきに無くなったので一歩下がって口を開く。



「とりあえず、ケンカはここまでにしといて落ち着いて話でもすればどうだ? お互いに言いたい事とかあるだろうし。」


そう言うと3人はチラチラと視線を交錯させていた。


もう一押しか? 正直俺はそろそろこの場を立ち去りたいんだが……お、アレを使うか。


「バニングス」


丁度目に入ったすぐ傍の花壇の中に落ちていた騒動の原因、すずかのカチューシャを拾うとアリサへと投げて渡す。


慌ててキャッチしたアリサが手にしたそれと俺を交互に見てからなのはを見て、最後にすずかを見る。


それだけ確認した俺は静かにその場を離れたのだった。





その後、無事3人は友達関係を結べたらしく仲良く話している姿が程なく当たり前の光景になって行った。


結局俺がした事は適当に後押しみたいな事だけだったし、後は我関せずとさっさと退散しただけ。


これだけ見ると随分淡白なヤツに思えるな、我ながら。


でもまぁ、そのお陰で3人が俺に接近してくるような事も特になかったし、内心ドキドキだったが結果はオーライで済んだらしい。





そしてそのまま時は過ぎ、2年へと進級を果たしたのだが、俺は自分の認識が甘かった事にこの時はまだ気付いていなかった。


行動には結果が伴う、と言う認識が。










>NEXT#3












☆あ と が き

…あれ、なんでだろう? 1年の時は特に正人が3人に関わる予定は無かったのに。

描写ばかりで原作キャラの出番も無いのは寂しいかなー、とか思いつつ書いてたらいつの間にかこんな展開にw

ま、まぁ、これを良い切欠として、これから正人の思惑とは裏腹になのは達3人が正人に注目していく過程を書きたいと思います。

原作開始まではまだかかりそうだなぁ…(^^;


メンテ
魔法少女と黒き戦士 #3 ( No.4 )
日時: 2010/02/25 12:19:05
名前: 八神ふ〜か 

序章 #3






2年生になりますた。


1度決まったクラスはそのまま進級らしく、顔ぶれは変わることなく6年間の付き合いになるそうだ。

あと5年も気配り生活(良い意味ではない)が続くのかと思うと泣けた。

幸か不幸かあのヘアバンド騒動からこっち、3人娘が俺に絡んでくる事もなく平穏な日々を過ごしている。


ただ何となくだが、最近なのは達からの視線を感じる気がする…特に目立つ様な事はしていない筈なんだが……。

しかもアリサからは睨まれている気がしてならない、特に小テストの順位張り出しの時が顕著な様な…。

俺、ホントに何もしてないよな…?



とりあえずは、進級するまでにあった出来事などを簡単に述べて行こう。



まず一つ、ペットができた。

とある日の下校中、家までの近道であるちょっとした山道を歩いていた時、野犬に襲われている一羽のカラスを助けた。

槙原動物病院に駆け込み治療してもらい、その後怪我が治るまでの世話を買って出て家に連れ帰ったのだ。


動物好きだし、その当時は家に帰っても暇な時間がある程度あったからな。

じーちゃんも快く了承してくれた、みょーに喜んでいたのは俺に友達がいないのを察していたからだろうか…。


そうして半月ほどで元気になったカラスを野に戻そうとしたのだが、懐いてしまったらしく結局連れ帰ってそのまま飼う事になった。

名前は「ナハト」ドイツ語で夜を意味する。

つけておいて何だが、我ながら厨二臭い命名をしてしまったと思う、反省も後悔もしてないが。




次に、じーちゃんの勧めで身体と心を鍛えるべく空手を始めた。

明心館空手道場と言う道場で、館長は巻島十蔵。

そう、とらハ3に出てくる例の空手道場だ。


槙原動物病院がある位だからもしかしてとは思っていたが、やっぱりあった。

残念と言うか当然と言うか、料理上手な青髪俺っ娘はいなかった、世界に関しては共通項があっても人物に関してはそれは無いっぽい。

通い始めた頃、学校では意識的に制限していた身体能力を試す意味も込めてちょっと張り切った、それが間違いだった。


「おめぇ、そこいらのガキとは違うようだな、特別な鍛練メニュー組んでやっから次からそっちやれ。」

と、巻島館長に目を付けられてしまったのだ。

この特別メニューがまた滅茶苦茶キツイのなんのって、どう考えても同い年くらいの普通の子なら半分もこなせずぶっ倒れるんじゃないだろうか?

身体能力が底上げされていた俺だからこそ何とか一通りのメニューを消化できているが、それでも翌日はグッタリする程なのだ。


稽古が週2日でマジで良かった……ようやくある程度の余裕が持てるようになった頃、館長が顔を合わす度に

「正人、週2なんてチマチマせずに毎日来い。」

とか言ってきた、コロスキデスカ?


放って置いたら本気で毎日にシフト変更されそうだったので必死に懇願して勘弁してもらった。

そのかわり毎日の自主鍛練を約束させられたけど…。

館長は豪快かつ強引だけど悪い人じゃないんだよな、俺に見込みがあるって思ってくれてるのは嬉しい。

半チートだから素直に喜べないが…。




そしてもう一つ、バイクに乗りたい一心でモトクロスを始めた。

前世でも仮面ライダーの影響から乗り始めたんだが、すぐに風を切って走る感覚の虜になった。

それをもう一度味わいたいと思ったら我慢できなくなり、基本的に年齢制限の無いモトクロスの選手になろうと決意したのだ。


父さんにメールで相談したら2分とかからずOKの返事が来て、その3日後にはモトクロッサーが届いた、はえぇよw

とりあえずは草レースに参加を目標に練習をしてるものの、本格的なスプリント用コースを備えた練習場所は海鳴には無い。

なので他県まで遠征しないといけないのが目下の悩みだ。




とまぁ、これくらいが主な出来事になる。

進級してからはどうなのかと言うと…。


「凄いね〜、こんなに近くの席になれるなんて。」

「そうだね、楽しくなりそうだね♪」

「なりそうじゃなくて、なるわよ、絶対。 …唯一の不満はコイツが後ろに居るって事だけね。」


クジで決まった新しい席にひたすら突っ伏して周りを見ない様にしている俺。

その周囲で楽しそうに会話する聞き覚えのあり過ぎる声×3。

言わずと知れた3人娘、ちなみにさっきの台詞は上からなのは・すずか・アリサだ。


3人と適度に離れていた1年の時とは真逆の席順……正直クジに細工してあったとか笑って言われても今なら信じるぞ。

何せ窓側から2列目最後尾の席の俺に対して、その左隣(窓際)になのは、目の前にアリサ右隣にすずか、と言う風に見事に囲まれているのである。

あまりの事に意気消沈中の俺を余所に盛り上がってるのは良いんだが、アリサさん、後半部分小声で言ってるけど常時ブースト掛かってる俺の耳にはバッチリ聞こえてます。


あれですか、仲良し3人並んで座りたかったと? 悪いが文句なら男女交互に座る様に配置決めした担任に言ってくれ。

それとも俺が近くに居るのが嫌だと言いたいのか?

これもクジ運だから諦めてくれとしか言いようが無い、つーかマジで俺何かしましたか…?

今に至るまで小テストとか全て1番にならない様に気を付けてたしなぁ。


そう言えば一回だけ俺が1位になった事があったな……あの時は本気で焦ったがたまたまアリサが調子悪かっただけだろうと結論付けた。

けど思えばあれ以降じゃないだろうか、アリサに睨まれ始めたのって…。

元々の「目立たない様に=3人と親しくならない様に」と言う方針からすれば良いのかもしれないが、それでもやっぱ理由も分からず嫌われているって言うのはちょっとばかり悲しい。



……我ながら、自分勝手な考えだな。

仲良くなる事で死亡フラグが立つ確率を減らしたい、そんな理由で関わらないようにと避け続けている癖に、いざその内の一人から嫌われたんじゃないかと思って悲観する、手前勝手もいいとこだ。

思わず自嘲の笑みが零れるが伏せっているので見られる心配は無い。

見られたとしてもなのはとすずかはキョトンとする程度かもな、アリサは…何となくだが怒りそうだ、根拠はないけど。



やがて担任がやってきて朝のSHRが始まった。

連絡事項を伝える先生の声を遠くに聞きながら、これからの1年の過ごし方をアリサの背中をボンヤリと見つめ考えてみる。

少なくとも1年の時の様に完全スルーとかは無理だろう、朝や帰りの挨拶くらいは問題無いとは思うけど。

後は基本的には極力スルーして行くしかないか…。



そんな今後の生活に不安と罪悪感を感じつつ、憂鬱な気分を最初の授業をボイコットする事で少しでも解消しようと机に伏せて目を閉じる俺だった。

その数分後、具合が悪いのかと心配したらしいなのはに声を掛けられたしまった、前途多難過ぎる……。




NEXT>#4


メンテ
魔法少女と黒き戦士 幕間 1 ( No.5 )
日時: 2010/02/28 02:01:40
名前: 八神ふ〜か 



幕間1・アリサ編「気に入らないのに気になるアイツ」





「それじゃあまた明日ね、アリサちゃん」

「うん、またねすずか」

車のドア越しに手を振り合う。

優しい笑顔の親友と別れ、家へと向かう車窓からあたしは流れる景色をただ何とはなしに見ていた。

ついさっきまではなのはやすずかと取りとめのない話で盛り上がって楽しい気分でいられたけど、こうして一人になるとフッと寂しさに包まれる。

それだけ二人といる時間が充実しているんだって実感した。

1年生になった頃にはこんな風に友達と仲良く登下校できるなんて想像もしてなかった、あの頃のあたしは……我ながら嫌な子だったから。

我儘で強引ですぐに他人に突っかかって、大人しいすずかにイジワルしてなのはに打たれて、そして…。



そこでアイツの顔を思い出して少しイラつく。

クラスメートで、教室ではあたしのすぐ後ろの席で、何考えてるのかイマイチ掴めなくて、あの時すずかに謝る切欠をくれたアイツ……影宮 正人。

アイツはヘアバンドをすずかに直接渡さずあたしに寄越してくれた、それがあったからあたしは素直に謝る事が出来て、二人とも仲良くなれたって言える。

その事に対しては今も感謝している、伝えた事はないけど。

でも正直今のあたしはアイツの事が気に入らない。

何でそう思うようになったのか、それはアイツのある行動に気が付いてしまったからだ。

その時の事を車窓の縁に頬杖を突きながら思い出して行く。






ウチの学校はエスカレーター式とは言え進学校でもある、だから小学校から成績をそこそこに求められる。

生徒の実力を調べたり勉強への意欲を持たせたりする為に小テストも良くある。

1年生でもそれは当然で、その日も算数の小テストがあった。

ウチのクラスでは答案用紙を集める時、後ろから前へと手渡していく方法を取っていた。

受け取った人は自分の答案用紙を下にしてまた前へと渡すと言うやり方だったから、自然と一番後ろの席の子の答案用紙が一番上になる。

当時のアイツの席はあたしと同じ窓際の最後尾、つまり手元に来た答案用紙の一番上はアイツのである。

以前ならそんな事気にも留めてなかったけど、その時のあたしにはアイツがちょっとだけ気になる存在だった。

だからなのか、何気なくあたしは影宮 正人ときれいな字で名前の書かれた答案用紙に目を通していた。



「…ん?」

硬筆でも習ってるんだろうかと思うほど整った文字で答えの書かれた答案用紙。

その答えを書く欄が二つ、何も書かれてないのに気が付いた。

(答えがわかんなかったのかしら?)

分からない問題を飛ばして解いてる内に時間が無くなって書けなかったのかも、とも思ったけど何故だか変な違和感があった。

それが何なのかわかんなくて首を捻っていると、前の席の子にまだかと聞かれ慌てて答案用紙の束を渡して謝罪する。

すると驚いた表情になる前席の男の子、あたしが素直に謝るのがそんなにおかしいの?と睨むと誤魔化しながら逃げる様に先生の所へ答案用紙を持って行った。

結局そのせいで感じていた違和感の事をすっかり忘れちゃってたのよね。



翌日、小テストの順位が張り出された。

クラス毎に上位15名の名前と点数が書かれてて、あたしと理数系が得意ななのはが共に100点で同率1位、すずかは96点で単独2位、アイツが92点で単独3位、と言う結果だった。

その小テストは問題数が25問、つまり1問の配点は4点だから2つ無記入だったアイツが92点って事は答えを書いてる問題は全問正解してるって事になる。

そう思った時にまたあの違和感を感じたので自分の答案用紙を見返し、アイツが無記入にしていた問題を探す。

そして違和感の正体に気が付いた。

「…難しい問題は書いてて正解してるのに、何でそれより簡単な問題の方を書いてなかったワケ…?」



それがワザとなのか偶々なのかその時は判断できなかったあたしはその後、テストの度にアイツの答案用紙をチェックしてみる事にした。

そしたら、全てのテストでアイツは必ず何問かの答えを書かずに提出していることがわかった。

しかもそれだけじゃなく、確認してみたら配点的に無記入分以外は毎回全問正解しているのも判明。

ここからあたしは一つの結論に行きつく。

アイツは毎度毎度手抜きをしてるんじゃないか、と。



もしそうならそうする理由がわからない。

いつでも満点取れるのに取らない理由? 1番になるのを避けてる? 何で?

上に行きたくない理由……上にいる人間に並びたくない…もしくは抜き去りたくない…?

って、小テストの順位でアイツの上って大概あたしよね…?

てことは、アイツが手を抜いてる原因ってあたし……?



そう思った途端頭に血が上るのが分かった。

いますぐ詰め寄って問い正したくなる、が直ぐに思い留まった。

今の時点では全部推測に過ぎないからもし違ってたら只の言いがかりになる。

とりあえずは落ち着いてもっと良く考えてみるべきよね…。



なんて思いの外短時間で冷静さを取り戻した自分に小さく苦笑する。

少し前の自分なら怒りにまかせてアイツを締め上げてたかもしれない、でも今は違う、物事を落ち着いて考えられる様になって来た。

そうなれたのはきっと二人の友達のお陰。

優しいあの二人と一緒にいるから、あたしも少しは心に余裕みたいな物が出来たんだと思う。

全く、なのはとすずか様々って感じよね。

とにかく、アイツが手抜きしている可能性は濃厚、原因はアタシかもしれなくて理由はわからない。

それが確認できる方法が何かないかと考えて、やがて思いついた手段、それは――



某日、教室で黒板の横に張り出された前日の小テストの順位を見たクラスメイト達がざわめいていた。

何故なら、自慢じゃないけど入学してからこっち、ずっと1位をキープし続けていたあたしが3位にまで転落していたからだ。

調子が悪かったのか?何かミスでもしたんじゃ?と順位表を見ながら囁き合ってる皆とは違う方向をあたしは見ていた。

視線の先、呆気にとられた顔でやはり順位表を見ている今回の単独1位、影宮 正人を。

「!」

しばらく呆けていたかと思ったら、あたしが見ていた事に気付いて顔を俯かせる。

その瞬間をあたしは見逃さなかった、その時あいつは明らかに「しまった」と言う顔をしていたのを。

それで確信が持てた、やっぱりワザとだったんだ、と。






窓越しに見える風景が家が近い事を報せてくれる。

記憶の波間を漂っていた思考がゆっくりと引き戻される感覚を感じながら、あたしの独白は続く。



あれ以来あたしはにとってアイツは「気に入らない」相手になった。

どんな理由があるのかは知らないけど、やり方が気に食わない。

問い詰めたいとも思うけど、そこまで親しい仲でも無い。

そんなこんなでアイツの事を考えてはイライラする日々を送っている。

いっその事強引に友達にでもなれば理由を教えてくれるんだろうか、何ておかしな考えまで浮かんできた。

でも案外それもアリかも…? 口には出さないがすずかもなのはもアイツの事を気にしてるのは知ってるし、あたしが直接持ちかけるのは嫌だしなによりアイツが受けるとも思えないし…。



「あ〜〜〜〜もぅ!! ムカムカするっ!」

グルグル回る思考に生来短気なトコがあるあたしは叫ぶと共に一旦考えるのを止め、全てを明日からに持ち越すと決めた。

「とりあえず…疲れたから今日は早めに寝よ…」

幸い時間はある、2年からアイツの席は私のすぐ後ろだしなのはとすずかは両隣、その内話をする機会も出来るかもしれない。

本来なら気に入らないヤツと話なんかしたくもない筈なのに、何故だかアイツにはそうは思えない。

気に入らないのに気になる存在、そんな奇妙なアイツの事を頭の隅に一旦引っ込めてあたしは携帯を取り出し、気分転換に親友達に雑談メールを送るのだった。



















☆あ と が き

アリサの独り語り風に挑戦してみましたが…疲れた…w

原作キャラのイメージを壊さずにやろうとするのは思いの外骨が折れると知りました^^;

こんなんアリサじゃない!と思われた方、スイマセンデシタ…orz


メンテ
魔法少女と黒き戦士 #4 ( No.6 )
日時: 2010/03/06 00:56:09
名前: 八神ふ〜か 




ジメジメとした鬱陶しい梅雨も過ぎ、季節は本格的な夏を迎えようとする頃。

あと半月もすれば全国の学生諸子待望の夏休みである。

かく言う俺も人一倍、いや、人十倍は夏休みの到来を待ち望んでいた。

何故かと言えば……

「おはよう!影宮くん!」

「……あぁ、おはよう」

席に着くなり元気な声と満開の笑顔で朝の挨拶をしてくる未来の魔砲少女、高町なのは。



おおよそ一年前のあの何処となく人の顔色を伺う様な影は最早どこにもなく、無口で無愛想な隣人にもこうして声を掛けてくる。

最近は挨拶だけでなく、世間話的な事でも話しかけて来る様になってきた。

親交を深めたくない俺は努めてそっけない態度を取り続けている、会話しても「あぁ」とか「いや」とかほぼこの程度。

自分のキャラじゃないのを演じるのは疲れる……が、それ以上に毎回俺の態度にシュンとなるなのはを見る度になけなしの良心がチクチク痛んでしょうがない。

その上すずかまで困った様な悲しい様な目でチラチラと見るし、アリサに至っては睨み具合が酷くなる始末。

正に針の筵、お陰で精神的疲労が溜まりっぱなしだ。

夏休みになれば合理的に3人と離れる事が出来て心も安まる、早く来い来い夏休み、と言うワケである。



その後すずかやアリサとも簡潔に挨拶を済ませると、朝のSHRまでまだ少し時間があったのでカバンの中からとあるパンフレットを取り出し眺める事にした。

数ページしかない薄っぺらいA4サイズのパンフレットの表紙には大きく印刷されたポップな文字で「第一回 キッズモトクロス大会 in 海鳴」と書かれている。

夏休み真っ最中の8月中頃にここ海鳴で開催される草レースの案内パンフレットである。

今まで海鳴には競技用のコース等は無かったのだが、地域振興を目的として地元の幾つかの企業や有力者が出資し開催される事が決定したらしい。

しかも第一回と明記されている様に、今後も定期的に大会が催される予定だそうで、海鳴西区にある運動公園の一部を改修して作られる特設コースは大会の無い時は練習用に開放されるとの事。



これは今まで他県にじーちゃんの車で連れて行ってもらっていた俺としてはかなり嬉しい出来事だ。

勿論出場するつもりなのでエントリー用の申込用紙は夕べの内に書き上げ、封筒に入れて今朝登校途中でポストに投函してきた。

草レースとは言えちゃんとしたレースに参加するのは生まれて(前世含む)初めてで結構楽しみだ。

だからとは言わないが、その時俺はパンフレットを見ながらレースまでの予定を考えていて、隣からじっと見られている事に気付いてなかった。



(大会前に一度バイクを整備に出さないとな……簡単な整備なら『前』からの知識もあるし出来なくもないけど、ウチだと工具が無いんだよな……)

「影宮くん、それなぁに?」

「……ん、モトクロス大会のパンフレット」

(夏休み始まったらじーちゃんに頼んで車出してもらうか……でもその前にもう一回練習したいな)

「もとくろす?」

「……オフロード用バイクを使ったレースの事」

(コーナーの立ち回りの確認、それとジャンプももっと確実にしておきたいし……)

「影宮くん、レース出るの?」

「……あぁ、そのつもり」

(そうそう、ウェアも新調したいな、折角初めてレースに出る……ん?)



あれ? 今俺誰かと話して……って、あの声は一人しかいないが、まさか……

間違いであってくれ、と割と絶望的な事を願いつつゆっくりと左側へと視線を移すと

「にゃ?」

猫みたいな呟きと共にどうしたの?と何やら楽しそうな顔で小首を傾げるなのはの姿。

ちくしょう可愛いじゃないか、思わずお持ち帰…じゃない落ちつけ、俺!

「……俺、変な事言わなかったか……?」

内心の動揺を悟られない様にいつものポーカーフェイスで聞いたつもりだが、言ってる内容が既におかしかった。

「? ううん、普通に答えてくれたよ? いつもよりたくさんお話ししてくれて嬉しかったよ」

若干意味不明な質問に一瞬キョトンとした後、嬉しそうに笑いながらなのはが言う。

ふっ、萌えたぜ……真っ白に萌え尽き……てる場合じゃねぇ!! 何やってんだ俺はぁぁ!?

等と心の中で大絶叫しながらもポーカーフェイスは崩さない、それが俺クオリティ。

……うん、全然落ち着いてないな、俺。



その後更になのはが話掛けて来ようとした処で担任の先生が登場し、会話はそこで終了となった。

先生の背後に後光が見えた気がするぜ……。

感謝の気持ちで先生に向けて心の中で手を合わせていると、すずかからの視線を感じた。

目線を合わすとサッと逸らされる。

何なんだ、俺また何かやらかしたのか……?



結局それ以降はその日は特に何も無く過ぎて行った。

まぁ、女の子だしバイクとかレースとかそんなに興味を引く物でもなかったんだろう。

そんな極一般的な見識で判断した事が半分正解で半分は見当違いだった等と、この時の俺に分かる筈も無かった……。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




アッーー! と言う間に夏休み、そしてキッズモトクロス大会当日である。

特設会場は予想よりも多くの人が訪れ結構な賑わいを見せていた。

「コースもかなり本格的だな……最終コーナー手前の3連続ジャンプが勝負の決め所か」

ざっとコースを見渡しながら走行ルートの確認をしつつ、黒一色の真新しいウェアを着込んで行く。

「怪我せんように気を付けるんじゃぞ、正人」

「わかってるよじーちゃん、大丈夫だって」

プロテクターを付け終わりじーちゃんが差し出してくれたヘルメットを受け取る。



大会はまずAとBのそれぞれ20人ずつからなる二つの組で予選が行われ、各組上位10人ずつの合計20人で決勝戦となる。

俺は予選A組なので早速の出番だ。

数分間の練習走行でコースの感触を確かめるといよいよスタートとなった。

全長約1キロの起伏に富んだコースを2ヒート(1ヒート=5周)走破し順位を競う。

いち早く集団から抜け出す事が出来た俺は、先頭の数台のグループに追随しながら付かず離れずの位置をキープし続ける。

予選で全力を出す気は無い、10位内さえ入っていれば決勝に出られるので余力を残しておく作戦だ。

尤も、俺の体力や運動神経は他の同年代の子達に比べると反則級なので、普通にやっても余裕はあるのだが。



終始そのままの順位を維持し予選を5位で通過、決勝進出を決めた。

予選B組のレース中に水分補給と整備を済ませ短い休憩を取る。

今回整備を担当してくれているのは父さんの友人でバイクショップを経営している園部さんと言う人だ。

モトクロス関連の品も取り扱っていて、俺は園部さんのお店の常連となりつつある。

俺の愛車のモトクロッサーを納品してくれたのも園部さんだ、通りで父さんに相談した後の展開が早いワケだよな……w



予選B組のレースも終了、10分ほどの休憩を挟みついに決勝戦。

スタート位置に並ぶ20台のモトクロッサーのエンジンが唸りを上げ、独特の緊張感に包まれる。

そして――スターティングマシンの鉄枠が倒され、全車アクセル全開で第一コーナーへと殺到、早めに内側を取った俺は切り込むようにコーナーへと侵入し、再び加速しつつ外側へと抜ける。

この最初の攻防で先頭集団へと入る事が出来、そこからジリジリと周回毎に順位を上げ、後2周となった時には3位に食い込んでいた。

前方数メートルを走る1位と2位のライダーは中々の腕前の様で、簡単には抜けそうもないがここは焦らず着いて行く。

ラスト1周、最終コーナーで勝負に出る!



そして最終コーナー手前の3連続ジャンプに差し掛かった時、それは起こった。

1つ目のジャンプを跳んだ1位のライダーが着地に失敗し転倒、その直ぐ後を走っていた2位のライダーが巻き込まれた。

2位のライダーのモトクロッサーは転倒していた1位のモトクロッサーに接触し前へと吹き飛びライダーが振り落とされる。

モトクロッサーはそのまま2つ目のジャンプの傾斜に激突したと思ったら大きく跳ね上がり、後方、つまり進行方向とは逆に飛んで行く。

それは今正に1つ目のジャンプをしようとしている俺の真正面、しかも高さ的にそのまま普通にジャンプすれば直撃コース!?

「こ……のぉっ!!」

咄嗟にアクセルを全開にしてジャンプに突入。

思いっきり勢いを付けて跳ぶと少しだけ宙を舞うモトクロッサーの上へと出る。

「いっけぇぇぇ!!」

気合い一閃! 眼下のモトクロッサーを踏み台の様にして更に前へと跳ぶ!

通常よりも遥かに長い滞空時間を経て地面へと着地、激しい衝撃に必死に機体をコントロールして何とか転倒は免れた。

結局それが決定的となり俺はそのまま1位でチェッカーフラッグを受け優勝してしまった。

シグナルが出てるかと思ったが、二人のライダーは大きな怪我も無く思いの外早くレースに復帰していたらしく、そのまま続行となっていた様だ。



表彰台に上がって運営委員の人からトロフィーと盾を受け取って、ようやく自分が優勝したんだと言う実感が沸いて来た。

最後のアレは咄嗟にやった事とは言え、我ながらよくあんな器用なマネが出来たもんだ……。

もう一回やれと言われても絶対無理だな、ていうかやりたくないw

あの奇跡とも言うべきバイクアクションがあったからか、観客の方へとトロフィーを掲げて見せると大きな拍手と歓声や祝福の声が挙がった。

じんわりと滲む嬉しさに笑顔で観客達をぐるりと見回して―――





――その中に見た事がありすぎる顔が3つほどあった気がして、全力で視線を逸らした。






☆あ と が き

遅くなりましたが第4話、何とか投稿完了w
本文中にモトクロスに関する用語やレースの描写がありますが、私、ドシロウトなので何も知りませんw(マテ
ネットでちょこちょこ調べた知識のみで書いたので突っ込み処満載だとは思いますが、そこは生ぬるい目で読み流して頂ければ・・・w
メンテ
魔法少女と黒き戦士 #5 ( No.7 )
日時: 2010/03/10 22:23:46
名前: 八神ふ〜か 



拝啓、今頃どこかの国の空の下にいるであろう父さん、お元気ですか、俺は元気です。

つい数時間前、海鳴での草レースで優勝しました。

頑張った甲斐があったと思います、じーちゃんも褒めてくれました、今日は最良の日です。

最良の日、なんだけど……現在進行形で最大のピンチです……。





「それじゃ、影宮くんの優勝を祝して、かんぱーいっ!」

「「カンパーイ!」」

「……ども」

喫茶翠屋、その快適な温度に保たれた店内の一角で、ささやかな祝宴がなのはの音頭により始まった。

俺達4人が陣取っている隅のテーブルの上には、色とりどりのケーキやジュースにシュークリーム等が並べられ、豪勢な事になっている。

丁度昼時とあって他にも割と客がいるのだが、なのはの声に数人がこっちを微笑ましそうに見ている、ハズイ……。

何でこんな事になってるんだと、シュークリームを齧りつつ思い返してみた、メチャうめぇよちくしょー。



表彰式が終わり、そそくさとじーちゃんが待つ駐車場へと向かっていたらなのは達に捕まった。

なのはからは絶賛、すずかは控え目に、アリサには何か皮肉交じりに賛辞を受け、内心キョドりながら曖昧に礼を言い立ち去ろうとした、が。

「今からウチでお祝いしよっ!」

と、唐突になのはが言い出しすずかとアリサもそれに賛同、慌てた俺は「だが断る!」的に言ったのだが「しかし答えは聞いていない!」風に押し切られてしまったorz

そのときのやりとりはこんな感じだ。



「いや、そんな事してもらうワケには……」

「クラスメイトだし、席も隣同士だから遠慮なんていらないの!」

微妙過ぎる間柄だろそれ、むしろ遠慮するのが普通だっての。

「ちょっと疲れてるから……」

「疲れてる時は甘い物を摂ると良いんだって! ウチは喫茶店でおかーさんはパティシエなの、おかーさんの作るお菓子はとってもおいしいよ!」

身体の疲れは取れても精神的な疲れが増えるんだよっ。

「でもだな……」

「もしかして、迷惑……なの?」

「謹んでお招きに預ります」

涙目は反則だろ!? すずかもそんな捨て猫みたいな顔するな、アリサは目に殺気を込めるな!!

と、そんな感じで断れなくなって承諾し、とりあえず一度帰宅して汗を流してから翠屋に向かう事になった。

3人と分かれて振り返るとじーちゃんと園部さんがとてもイイ笑顔でサムズアップしてた、ざけんな。

そして家で身だしなみを整え翠屋に向かい現在に至る、というワケである。



それにしても、まさかこんな形で翠屋に訪れる事になるとは思わなかったな。

3人と関わらないと決めた時、ここには来れないだろうと諦めてたのに。

チラリと見渡す。

なのは達が楽しそうに話しながら桃子さんの洋菓子に舌鼓を打っている。

話題は今日のレースを見た感想だとかが中心の様だ。

そう言えば、と、ふと疑問が浮かぶ。

会場で会った時も思ったが、何で3人はあそこにいたんだろう? どうも口振りからすると俺を見に来たっぽいんだが……聞いてみるか。



「一つ、聞いていいか?」

会話の切れ目を狙って言った俺の言葉に3人がこっちを向く。

「どうして俺があのレースに出るのが分かったんだ? 近県でも幾つかレースは予定されてた筈なんだが」

「それは別に単純な事よ」

俺の問いに一度顔を見合わせた3人だったが、直ぐにアリサがそんな事か、と言った風に答える。

「アンタとなのはが夏休み前に話してたでしょ、レースの事」

確かに、だがあの時は何処の大会に出るみたいな話はして無かったと思う、パンフレットも開いてたから表紙の「キッズモトクロス大会in海鳴」のロゴは見られてなかったハズだしな。

「アンタが持ってたパンフに何となく見覚えがあったのよね、で、良く良く思い出してみたら同じ物をウチでも見た事があったのよ」

アリサの家で……? 何でまた。

「二人が話してた時は忘れてたんだけど、あのレースに出資してた企業の一つがあたしのパパの会社だった、って訳」

なん……だと?

「それでもしかしたら、って思ってパパに頼んで出走者リストを見せてもらったらアンタの名前があった、そーゆーコト」

ふん、とつまらなさ気に肩を竦めるアリサ。

そんな繋がりがあったとは、自分の見通しの甘さに自分で呆れる、迂闊すぎだろ、俺。

とりあえず疑問は解けたが、それなら何でわざわざ見に来たのかと聞いたら

「そっ、それは……ク、クラスメイトがそんなレースとか出てるのって凄いなぁって思って!」

と、何故かなのはがワタワタしながら言った、何なんだ?





それからは当たり障りのない会話が続きテーブルの上の物もほぼ片付いた、宴も酣と言った頃だろうか。

この様子ならさほど問題無く終われそうだと思っていた時、ソレは起こった――

「あの、影宮くん……」

「? 何だ? 高町」

「もし良かったら……なのはとお友達になってください!」

「うん、それ無理」

「即答!? しかも一回うんって言ってから断られたの!?」

なのはのいきなりなお願いについ脊椎反射並みの速度で某眉毛委員長のセリフが出てしまった。

「アンタねぇ、いくらなんでも即答は無いんじゃない?」

にゃあにゃあ騒ぐなのはを尻目にアリサがジト目で睨んでくる。

仰る通りなのだがつい反射的に言っちゃったんだからしょうがない。

大体友達フラグなんて立てた覚えが無いのに、何がなのはの琴線に触れたと言うのか謎過ぎる……。

しかしまずいな、何とか誤魔化さないとアリサの怒りが天元突破するかもしれん。



「……ちょっと事情があって友達とか作らない事にしてるんだ」

嘘は言ってない、尤も当初はなのは達限定だったが、今では実際に友達一人もいなくて一匹狼が定着してたりする。

「事情ねぇ……なのはの申し出を断るんだからそれなりの理由なんでしょうね?」

「あ……アリサちゃん……」

険呑な空気を放つアリサにそれを宥めようとするすずか。

ここで理由が『お前達に深く関わって死亡フラグを立てない為だ!』 とか言えるワケもない。

何かそれらしい理由……ん……これならいけるか? 正直気は進まないが……。



ふぅ、と一度深く溜息を吐いて視線を上げる、すっかり慣れたポーカーフェイスも忘れない。

「別に大げさな理由でも無いし、どこにでも良くある話さ、俺の母さんは俺が小さい頃に死んでて父さんも仕事と言うか……世界中を飛び回ってるから滅多に帰って来る事も無くてな、俺はじーちゃんの処で暮らしてるんだ」

母さんの下りで3人が微かに息を呑む気配を感じた。

俺は努めて冷静に言葉を続ける。

「じーちゃんは元気だけどそれでも俺の身の回りの世話とか大変だと思う、なのにじーちゃんはその上俺に好きな事とかまでやらせてくれてる、だから俺はなるべく自分で出来る事は自分でやってじーちゃんの負担を減らしてやりたい」

淡々と語る俺を3人は神妙な面持ちで見てくる。

ついさっきまでの楽しい雰囲気は既に何処にも無い。

まぁ、こうなるのは分かってたから気が進まなかったんだが……。

「自分の身の回りの事とか家の事とかやってれば俺の自由になる時間なんて殆ど無い、もし友達とかいたとしても遊んだりする時間が無いんじゃただの付き合いの悪い奴になるだけだしな、それじゃあ相手に悪過ぎる、だから最初から友達なんて作らない方が誰も傷付かないし嫌な思いだってしなくて済む、それが理由さ」

話終えて一口分だけカップに残っていたコーヒーを飲み干す。

いつの間にか他の客が帰り静かになった店内のやや重くなった空気と相まってやけに苦く感じた。

なのはとすずかは暗い顔で俯いてるし、アリサもバツが悪そうに視線を泳がせている。



そうしてしばし沈黙の時間が過ぎて。

「悪いけど、俺はそろそろこの辺で帰らせてもらうとするよ」

それだけ言って気まずい雰囲気を払うでも無く、俺は席を立つと3人に背を向ける。

「あ……うん……」

と、覇気の無い声でなのはだけが返事を返した。

……自分でやっておいて何だが、やっぱりこう言うのは苦手だ。

「高町、月村、バニングス」

振り返って声を掛ける。

「今日はこんなお祝いとかしてくれて感謝してる、なのに空気悪くしてごめん」

小さく頭を下げると3人とも少し驚いた様子だった。

「それと高町、俺の理由はともかく、友達に誘ってくれた事は嬉しかった、ありがとう、ごめんな」

「え……あ、ううん……」

ぎこちなく、それでも笑おうとするなのはの姿にいたたまれなくなった俺は踵を返すと、カウンター越しに静観していた士郎さんにお辞儀して翠屋を後にした。



今回のあの席は純粋になのはの厚意で実現した事、それを俺の思惑の為にこんな風な終わり方になってしまい流石に気が重い(良心的な意味で)

出来る事ならこれで距離を置いてくれれば、と思う。

そう願いながらも、どこか拭いきれない不安を抱えつつ家路を辿る。

「世界はいつだってこんな筈じゃない事ばっかりだよ、か……」

ポツリとまだ見ぬ執務官の名セリフが口から零れた、それが何だかフラグっぽい事に気付いて更に落ち込んだ、うぐぅ。




NEXT>#6
メンテ
魔法少女と黒き戦士 幕間2 ( No.8 )
日時: 2010/03/14 17:46:06
名前: 八神ふ〜か 


幕間2・なのは編「笑顔を見せて」






初めてその男の子に興味を持ったのは、大切なお友達との始まりのあの日。

クラスでは他の男の子達と違って、とても大人しくて、いつも独りで。

人を寄せ付けない雰囲気を感じさせるのに、何も言わずにケンカしていた私とアリサちゃんを気遣ってくれた、きっと優しい人。

それからは時々目で追うようになって、そしてある事を知ってからはちゃんとお話ししたいなぁって思う様になったけど、結局1年生の時は出来なくて。

2年生になって偶然席が隣になったのはビックリしたけど、お話し出来るかもって思うと嬉しかったの。

でもいざ話掛けてみても影宮くんはいつもちょっとしか返事をしてくれない。

どんな話題を振ってみても二言三言で終わっちゃうの、うぅ……。

だけど、短くても必ず答えてくれるから嫌われてるとかじゃない、よね?

誰に対しても同じ態度みたいだし、単にお話しするのが苦手なのかな……?



「ねぇなのは、何でアイツにあんなに構うのよ?」

春の日差しがポカポカと暖かいある日の屋上のベンチ、アリサちゃん達と一緒にお昼ご飯を食べているとそんな事を聞かれた。

二人と仲良くなってからは、天気の良い日とかはこうして屋上で食べる事がいつの間にか習慣になってるの。

「ふぇ?」

お口に入れたばかりの唐揚げをもぐもぐごくんっと飲み込んでから、んー、と聞かれた事について考えてみる。

私が影宮くんに話掛ける理由……お話ししたい、うん、これが多分一番の理由。

けど、それと同じくらいに

「笑った顔、見てみたいから……かなぁ?」

「笑った顔?」

ポツリと呟いた言葉に隣に座っているすずかちゃんが聞き返してきた。

1年からずっとクラスメイトとして過ごして来たけど、私は一度も(多分アリサちゃんもすずかちゃんもクラスの皆も)影宮くんが笑っている所は見た事が無いと思う。

影宮くんはいつも一人でいるし、誰かと仲良くしてる様子もありません。

時々とてもつまらなさそうにぼうっとしてるのは知ってるけど。

「笑った顔ねぇ、いつも無愛想なアイツの笑ったトコなんて想像もできないわ、て言うかアイツ笑う事なんてあるのかしら?」

お弁当のタマゴサンドを食べながらどことなく不機嫌そうに言うアリサちゃん。



いつ頃からか、アリサちゃんは影宮くんの事になると今みたいにちょっぴり不機嫌さんになっちゃうようになった。

理由を聞いても教えてくれなくて、でも嫌ってるって事じゃないって言ってた。

アリサちゃん曰く「気に入らない」らしい、何がなのか私もすずかちゃんもサッパリなの……。

「確かに影宮君ってあんまり感情出したりしないよね、いつも淡々としてるし」

と、すずかちゃんもアリサちゃんと同じ意見みたい。

でも私は知ってる、影宮くんのいつもとは違う部分を……。





それはとある日、アリサちゃんのお家の車で途中まで送ってもらって、住宅街を歩いて帰っていた時。

二つ向こうの右手側の通りから見慣れた白い制服の男の子が小走りに現れて、良く見てみるとそれは影宮くんだった。

影宮くんはいつもは見ない様な少し慌てた様子で、手の中に何かを抱えてたの。

「……カラス?」

遠目にもハッキリ分かる真っ黒な鳥さんは、首のトコと羽にちょっと赤くなってる部分があってどうもケガしてるみたいだった。

影宮くんが走って来た方向には小さな山があって、そこを越えると学校までの近道になるんだけど、小さいとは言ってもそれなりに木も繁ってて暗いし危ないからと、学校では入らない様にって注意されてるの。

もしかして影宮くんはそこを通ってて、ケガしたカラスを見つけたのかな?

そう疑問に思ったけど、影宮くんの姿はもう見えなくなってて、仕方なく家に帰ったの。



それからしばらく経ったある休日、美由希お姉ちゃんとお散歩に行った帰り、通りかかった公園の中に影宮くんがいるのを見つけた。

影宮くんから少し離れた所にカラスがいて、影宮くんがスッと腕を前に差し出すとカラスがその腕に飛び乗る。

「へぇ、カラス飼ってるなんて珍しいね〜」

隣のお姉ちゃんが私の視線の先の光景を見て何故か小声で言って来ます。

でもその時の私はお姉ちゃんの声が頭に全然入って来て無かった。

今まで見た事の無い、凄く優しい顔をした影宮くんをずっと見ていたから……。

あの時からだと思う、影宮くんの事もっと知りたいって思うようになったのは。

あんな優しい顔が出来るなら、笑うともっと優しい感じなのかな? って。





屋上でのそんな一時の後も、私は頑張って影宮くんに話掛けた。

変わらないそっけない態度にシュンとなる事もあったけど、ちょっとずつでも近付けてたらいいなと思いながら。



夏休みの少し前、影宮くんがモトクロスって言うバイクのレースに出る事を知って、興味があったのでアリサちゃん達二人と見に行った。

沢山のバイクが一斉に走ってジャンプしたりするのは凄い迫力で、圧倒されっ放しだった。

黒で統一した姿の影宮くんは予選を勝ち抜いて決勝戦に、途中影宮くんの前を走っていた2台が事故を起こして危ないシーンもあったけど、影宮くんは凄い運転でそれを乗り越えて優勝しちゃいました。

表彰台でトロフィーを受け取った影宮くんを見ていると、トロフィーを掲げながら観客の方を向いて―― 笑った。

「あ……」

初めて見る影宮くんの少し照れたようなはにかんだ笑顔に、何故か胸が苦しくなった。

なんだったのかな、あれって……?



レースが終わった後話しかけた私達を見て驚いてた影宮くん。

すっかり興奮してた私はちょっと強引に影宮くんを優勝のお祝いに誘って、お父さんとお母さんの喫茶店「翠屋」に招待した。

そして私は勢いのままに影宮くんにお友達になって欲しいってお願いして……断られたの。





「なのはちゃん……その、元気だしてね?」

影宮くんが帰った後、お家に帰る二人を見送った時すずかちゃんがそう言って励ましてくれた。

何とか笑顔で「大丈夫」と言えたけど、ホントは少し落ち込んでてお部屋に戻って倒れるみたいにベッドに飛び込みました。

「……知らなかったとは言え、無神経な事言っちゃったなぁ」

お母さんがもう亡くなってて、お父さんもほとんどこっちにはいなくて、お爺さんと二人暮らしをしてると言う影宮くん。

お世話になっているお爺さんをちょっとでも助ける為に出来る事をしてるって言ってた……。

だから遊んだりする時間は殆どないから友達は作らない、とも。

まるでお父さんが大怪我をして入院していた時、慌しくなった家族に迷惑かけちゃいけないってずっと一人で居た私みたいだって、思った。



帰り際、影宮くんは落ち込む私達を気遣ってくれて、友達になりたいって言った私に嬉しかったって言ってくれた。

どんなに無愛想でも、無口気味でも影宮くんはやっぱり優しいんだなぁ。

それを感じると沈んでいた心が少しだけ軽くなったのを感じる。

影宮くんの言ってた事は分かる、どことなく私に似てるから。

でも私には今はアリサちゃんとすずかちゃんと言う大切なお友達がいて、二人のお陰で沢山笑って沢山思い出ができた。

できれば影宮くんにもそんな風に笑って、楽しい思い出を作ってもらいたい。



「……やっぱり今のままなんて良くない!」

ガバッとベッドから身を起こした私。

もう落ち込んでなんかいられないよね!

諦めずに何が何でもまずはお友達になってもらうの! それで……



これからの事を考えながら、決意を伝える為にアリサちゃん達にメールを打つ。

いつか影宮くんが私に向けて笑顔を見せてくれる事を願いながら。





☆あ と が き
なのは編、お届けいたします。
若干書き切れて無い部分もある気がしますが…大体書きたかった事は書けたかなーw
ではまた、次のあとがきにて。
メンテ
魔法少女と黒き戦士 #6 ( No.9 )
日時: 2010/03/20 00:56:03
名前: 八神ふ〜か 




平穏なようで色々あった夏休みも終わり、また少しばかり退屈な学校生活が始まった。

あの日のやり取りの後しばらくは何となく悪い事をしたなーと重い気分が続いたが、死亡フラグ回避と言う命題の為には仕方ないと開き直る事

にした。

それなりの理由も提示したんだ、多分なのはのアプローチも減るだろう。

挨拶とかはしてくるだろうけど沈んだ顔とかでされたら地味にキツイな……まぁ、時間が経てば……。

――そう思っていた時期もありました、具体的には10秒くらい前。



「おはよう!影宮くん!」

俺が席に着くなりこっちを向いてお日様みたいに明るい笑顔で挨拶してくる高町さんちのなのはさん。

……あれ? これなんてデジャヴ?



新学期初日、つまり始業式の日。

半日で終了となり帰ろうとしたらなのは達に捕まり(またか……)屋上へと連れて行かれた。

何事かと困惑しているとなのはがお話しがあるとの事。

そこで語られたのはなのはの決意表明みたいな物らしく、要約すると「事情は分かったけどでもやっぱりそれだと尚更放っておけないの!」だ

そうだ。

いやいやいや是非とも放置してください、と頼んでみるもあえなく玉砕。

その上またしても「お友達になってください」攻勢を掛けられ断ったのだが、凄く良い笑顔で諦めないと宣言されてしまった。

そして宣言通り、それから1ヶ月と少し経った今現在も、なのはの「お友達」への誘いは続いている。

誘われる度に断っているが全く挫ける様子が無い。

流石いずれは[不屈の心]のマスターとなる人物、そこに痺れる憧れるぅ! とか言ってる場合じゃないな……。

むしろこの思い込んだら一直線娘から1ヶ月間耐えた俺を褒めてくれ。





「それではこれより、運動会の出場種目別の選手を選ぶ会を始めます」

クラス委員長の号令に数名がはーいと返す。

今から2週間ちょっと先に行われる秋の定番行事、運動会での各々の出場種目を決める為、帰りの会の時間を利用した選考会が始まった。

全員参加が義務なので、最低でもどれか一つ出ないといけない。

しかし目立つ行動は(以下略)な俺は花形競技の50m走やリレー等はNGである。

正直出ればぶっちぎりで1位取る自信はある、と言うか同学年の子に負ける事はまずありえない。

唯一可能性としてはすずかが本気出せば良い勝負なんじゃないだろうか、試す気は無いが。



次々と選手が決まって行く中、俺は適当に団体競技にでも入ろうかと考えていた。

そうしてボンヤリしていると

「うぅ〜……」

と、何やら左隣から唸り声が聞こえて来た。

視線を移すと、机に突っ伏したなのはが種目の書かれた黒板を恨めしそうに見つめている。

そう言えば魔導師としては天才と謳われる(予定の)彼女も、こと運動に関しては見事なポンコツっぷりだったな。

去年の運動会では確か……大きなスプーンでボールを運ぶのに出場していたが、あっちにフラフラこっちにフラフラと迷走した挙句転倒して最

下位だった気がする。

結果はアレだが涙目で頑張る姿は多くのご父兄の方々の癒しになった事だろうw

懐かしい情景に心の中で笑っているとなのはがじーっとこっちを見ていた。

「どうした? 高町」

「……何となく意地悪な事考えられてた気がするの」

「……気のせいだろう」

「今ヘンな間があったの」

じとっ、とした目で上目使いに睨んでくるなのは、普段はポケポケしてる癖に時折変に鋭いよな、血筋のせいか?

しかしアリサならともかくなのはがやっても大して迫力が無いな、逆にちょっと可愛いくらいだ。

とか考えていると今度は何故か顔を赤くして目を逸らされた。

小声で何か呟いてるが聞き取れないし、何なんだ。

「な……なんでもないよー」

訝しげな俺の視線に気付いたなのはが手を小さく振りながらなんでもないと繰り返す。

まぁ、本人がなんでもないと言ってるんだから気にしなくていいか……。



「ねぇねぇ、影宮くん」

「?」

もうそろそろ団体競技の選考が始まろうとした時、なのはに話掛けられた。

「んとね、運動苦手な私が参加しても迷惑にならないのってどれかな……?」

何で俺に聞く? と反射的に言いそうになったが、真剣に困った顔で問い掛けられると無碍にもし辛い。

まぁ、それくらいならいいか……。

「そうだな、周りと協力できて尚且つ足の速さとかがさほど影響しない大玉転がしとかはどうだ?」

俺の提案にポン!と手を打つなのは、なるほどと言った表情だ。

タイミング良く大玉転がしの選考が始まったので早速立候補している、周りの様子から問題無く選ばれるだろう。



「では、只今の種目で団体競技の選考を終わります」

無事選手になれたなのはがお礼を言って来るのを適当に受け答えしていると、聞き捨てならない台詞が聞こえて来た。

黒板へと視線を向けると、団体競技の種目名とその下に選ばれたクラスメイト達の名前が並び、それぞれが全て定員一杯になっている。

……しまったぁぁ! 気を取られてる内に選考終わってたぁぁぁ!?

内心大絶叫、だが後の祭り。

残るは花形の単体種目と少数での種目のみ、ヤバイ、どーする、焦るな、考えるんだきっと道はある!

思いっきり動揺しながら残りの種目に目を通していた時、とある競技に目が止まった。

それは[男女混合二人三脚]

二人が足首を……って説明しなくても分かるな……。

兎に角、この種目でなら実力を誤魔化すのは難しくない。

元々が難度の高い競技だし、ワザともたついたとしても「タイミングが合わなかった」で済ませられる。

更に言うと、この競技なら最近俺と親交を深めたがっているなのはでも「一緒に」とか言いだせない。

なのはは自分の運動神経の無さを自覚してるし、ペア競技で足を引っ張る、つまり相手に迷惑を掛ける事になるのは嫌だろうからな。

これだ、これしかない!

我ながら完璧なアイディアに大いに満足しながら二人三脚の選考が始まるのを待った。



「次は……男女混合二人三脚の選手を決めたいと思います、まずは男子から、立候補はありますか?」

教卓でテキパキと進行する委員長が立候補を募る、これで誰も手を挙げなければ推薦に移る事になる。

難度のせいなのか、はたまた男女混合の部分に思う所があるのか、男子の誰も立候補する者はいなかった、俺を除いて。

「では他にいないので男子は影宮君に決定します」

二人三脚の下の男子の欄に俺の名前が書かれ、とりあえずは一安心だ。

次に女子の立候補を募る声が聞こえる。

誰が選ばれるか分からないが、先に心の中で謝っておこう、ゴメン君のペアは勝つ気全く無いから、と。

そんな自分勝手な事を考えていると、すぐ近くで人の動く気配、そして――

「私……立候補します」

控え目な、なのに強い決意を感じさせる声でそう宣言したのは、真っ直ぐに左手を上げた右側の隣人・月村すずかだった。



……ちょっと待て、何ですずかが?

あまりに予想外な人物の立候補に軽い眩暈を覚えたぞ。

1年から見てるが、すずかは大人しくて引っ込み思案で男の子は苦手なフシがある。

事実俺に対してもその傾向はあったし、今は多少改善してるとは言っても身体が密着せざるを得ない二人三脚なんて競技にあのすずかが立候補

するとは……。



結局呆気に取られている間に他の立候補者も出ずにあっさりと女子はすずかで決定となってしまった。

「あの、影宮君……よろしくね?」

ビミョーに視線を合わさずに言うすずかを見ながら、俺はこれから運動会当日まで平穏に過ごせるか頭を悩ませるのだった。

もう何度目になるか分からない、「何でこうなるんだ……」という呟きを洩らしながら。



NEXT>#7
メンテ
魔法少女と黒き戦士 #7 ( No.10 )
日時: 2010/03/25 01:04:36
名前: 八神ふ〜か 



タッタッタッタッ……

「イチ・・ニ・・イチ・・あっ!?」

「おっと……、ふぅ」

「ご、ごめんなさい、影宮君……」

もう何度目になるか分からない、申し訳なさげに謝るすずかに「いや、こっちこそ」と返事を返す。

僅かに日が傾き始めた放課後のグラウンド。

運動系の倶楽部の部員達が練習しているのを横目に、邪魔にならないよう端っこの方でこうして二人三脚の練習をするようになって数日。

正直なところ、あまり成果は出ていない。

俺が真剣に取り組んでない事もあるが、上手く行かない事に気負っているのか、日を追ってすずかが委縮してしまっているのも大きかった。



すっかり落ち込んでしまったすずかを見ていると決心が揺らぐ。

本当なら男の子はまだ苦手な筈のすずかが立候補してまで俺と走ろうとしている、その理由は分からないがすずかなりに決意を持って決めたんだろう。

一方俺の理由と言えば、ここでは誰一人として理解してもらえる筈も無い内容。

死亡フラグ回避とか話してもほぼ確実に頭の痛い子としか思われないよな。



最近ふとこのままで良いんだろうかと思う事もある。

俺の思惑とは外れ結局3人娘と関わりかけてるし、友人関係では無いってだけでもう何か崖っぷちに立たされているような気もする。

けど……いやしかし……でもなぁ……。

「あの……影宮君?」

しかしそうなると……うーむ……。

「影宮君?」

くいくい、と袖を引かれる感触ですずかに呼ばれている事に気付く。

「っと、何だ? 月村」

「あ……ごめんなさい、今日はそろそろ……」

「あ、あぁ、そうだな、終わりにしようか」

ついつい考え込んでしまったらしく、気付けばすっかり辺りは茜色に染まっていた。

一旦別れて体操着から制服へと着替えた後、玄関前で合流して校門を出て最寄りのバス停まで一緒に歩く。

そこに月村家のメイドさんがすずかを車で迎えに来る事になっているのだ。

すずかの習いごとが無い日にこうして練習していて、普段ならなのはとアリサも付き添っているんだが、今日は二人とも用事があるとの事でいない。

今回は月村家の迎えが来るまですずかのホディーガードをしろとのアリサの厳命があったので、校門から程近いこのバス停で二人で佇んでいる訳だ。



「……」

「……」

会話が無い。

俺から話題を振る事が稀なのと、すずかとは今までそんなに話した事が無いのが主な原因である。

どこか気まずい沈黙の中、ふとこう言う時いつも明るく皆に話掛けているなのはがここにいればなぁと思う。

アリサだと俺に対してつっけんどんな態度を取るのですずかが気を使うだけだし。

ちょっとだけなのはの存在のありがたさを実感してしまったぜ……。



どうしたものかと思案していると、少し俯いたままのすずかがポツリと言葉を漏らした。

「……私、ね」

「?」

「私、ずっと、影宮君に言いたい事があったの……」

言いたい事……?

すずかを見ると未だに俯いてはいるがその頬は微かに赤くなっていて、いつもの美少女っぷりが更に増しているように感じた。



薄闇に包まれ行く街角、二人だけのバス停、時刻表のライトに照らされながら俺を少し潤んだ瞳で見つめて来る頬を染めたすずか。

え? 何だこのシュチュエーション、これじゃまるで……いやいやいや!無い無い!んな筈が無い!

頭に浮かんだあり得ない考えを払いつつ必死に平静を保とうとしていると、すずかがこっちへと一歩分距離を詰めて来た。

「あのね……私、あの時からずっと……」

ちょ、ちょっと待て! まさか本当に……?

いよいよパニックになりそうな俺の内心に気付く訳も無くすずかがその先を言おうとした時――

「すずかちゃ〜ん! お待たせしました〜♪」

「あ……ファリン」

すぐ近くに止まったセダンタイプの白い乗用車から助手席越しに笑顔で声を掛けて来た女性がいた。

すずかよりも若干薄い紫のロングヘアーに少女の様な愛らしい顔立ちのその女性は、すずかの家で働くメイド姉妹の妹の方、ファリンさんだ。

話の途中で割り込まれた事は大して気にしていない様子のすずかは車へと乗り込むと「また明日」と微笑みながら小さくてを振って帰って行った。

残された俺はまださっきの展開からの流れに頭が付いて行かず茫然と佇んでいる。

だってそうだろう? 大して接点も無かった筈のあのすずかが、まさかこの俺なんかに

「告白とか……まさかなぁ……?」

前世でも一切そう言った体験の無かった俺に今回の事の真偽が図り知れる訳も無く、ただ呟きが風に乗って流れるだけだった。





翌日からの練習は更にぎこちないものとなってしまっていた。

相変わらずの状況、プラス前日の出来事から俺が変に意識してたりする事も有り余計にギクシャクすると言う悪循環。

なのははそんな俺達二人を必死に励ましてくれているが揃って意気消沈しっ放しだ。

それでも多少は練習を続けている効果はあるのか、最初の頃よりは躓かずにある程度の距離は進めるようにはなっている。

そして気付いたのは今はペースメイクをすずかがやっているが、彼女自身が前に出るタイプでない為かどうも主導するより相手に合わせるのが得意そうだと言う事。

だから俺がペースメイクをすれば上手く行く様な気もする、多分、俺とすずかの実力なら上位入賞は間違い無い位に……だがそれは俺の思惑に反する事になる。

現状と思惑と感情が混ざり合ってワケが分からなくなりそうだ……。

そんな状態で数日が過ぎ、元々あんまり深く考え込んだりするのが得意ではない俺はモヤモヤとした感覚に苛まれたまま、とうとう運動会当日を迎えてしまった。



「アンタ、ちょっと来なさい」

運動会日和の晴れ渡る秋空をぼんやりと見上げながらグラウンドに設営された自陣の応援席で出番を待っていると、いつもより棘のある感のアリサに呼び出された。

「もうすぐ出番なんだが……」

「すぐ済むわ、いいから付いて来なさい」

有無を言わせない態度で背を向けたアリサが歩き出したので仕方なくその後を追う。

近くにいたクラスメイト達はアリサの険呑な空気にただならぬ雰囲気を感じたのか、黙って顔を見合わせるばかり。

たが俺が歩き出してすぐ、すずかとなのはも立ち上がり心配そうな面持ちで付いて来た。

しばらく歩いて辿り着いた場所は、校舎裏へと続く途中の校舎と塀に挟まれたさほど広く無い空間、前を歩くアリサが立ち止りこちらを向く。

そしてツカツカとこっちに歩み寄って来たかと思った次の瞬間

パン!

と言う軽快な音とともに俺の左頬に衝撃が走り、数秒後じんわりと熱を帯びた痛みを発し始める。

「……昨日までずっとすずかの頑張りに免じて何も言わなかったけど、今日は言わせてもらうわ……アンタ、大概にしなさいよ!」

唖然となる俺を睨みつつ、慌てて駆け寄ろうとするなのはとすずかを手で制し、アリサの言葉は続く。

「アンタがどんな理由で実力隠してコソコソしてるのか、何を悩んでボケッとしてるのか知らないし、ここで今話せとも言わない……けどね、

今日とこれからの為にすずかはずっと努力してきた、アタシはそれを見て来たし、アンタだって見て来たハズよ」

気付かれてたのか……。

アリサの観察眼に驚いたが、今はそれよりも――

確かにすずかは俺と合わせようと頑張っていた、上手く行かないのは自分のせいだと落ち込みながらも、それでも頑張っていた。

「すずかの頑張りがほんの少しでも分かるなら……」

華奢なその手で胸倉を掴まれ引き寄せられる。

アリサの真剣な眼差しに至近距離で射抜かれ微動だに出来なくなり、そして

「せめてこんな時くらい……本気出してみなさいよ!!」

慟哭に近いアリサの叫びは、その時確かに俺の胸に響いた。



グラウンドの喧騒が何処か遠くに聞こえる中、アリサはゆっくりと手を離すと俺の脇を通り元来た道を戻り始める。

「これでまだすずかの頑張りが無駄になる様な事になったら、アタシはアンタを許さないから」

すれ違いざま、そんな台詞を言い残して。



「影宮くん……」

「影宮君……」

不安げななのはとすずかを見ていて思った。

(別に俺は、こいつらにこんな顔させたかったワケじゃないんだよな……)

転生して、この世界の未来を知っていて、ただそれに巻き込まれないようにとそればかり考えてきたけど、やり方はもっと他にあったのかもしれない。

けどそれを考えるのはとりあえず今じゃ無い。

(ハッパも掛けられた事だし、な)

まずはそこから始めるとしますか―――

『間もなく男女混合二人三脚が始まります。 選手の皆さんは入場ゲート前へと集合してください。 繰り返します――』

折良く二人三脚の開始が近い事を報せるアナウンスが聞こえてきた。

「月村、出番だ」

「えっ? あ、うん」

「高町も応援席に戻った方がいい」

「う、うん……影宮くん、だいじょうぶ?」

二人に行動を促すと、まだ少し心配そうななのはがそう尋ねて来る。

「大丈夫だ、それよりも応援の方、頼む」

そう返すと少しポカンとしたなのはだったが、直ぐに笑顔で頷くと応援席の方へと走って行った、転ぶなよー?

ゲートへと向かいながら隣を歩くすずかへと作戦を伝える。

まぁ、作戦とは言ってもペースメイクを俺がやるからすずかは兎に角それに合わせてほしい、と言っただけだが。

唐突な俺の提案に一瞬目を丸くしたすずかだったが、その後の「やるからには皆の度肝を抜こう」と言う俺の言葉に笑って頷いてくれた。



そうして挑んだ本番、俺もすずかも全力で挑み、その結果――俺達はぶっちぎりの1位でゴールテープを切ったのだった。

ゴール後にへたり込む俺の頭に濡れタオルを被せたアリサが

「やればできるじゃない」

と不敵に笑いながら言っていたのが印象的だった。





その後ちょっとした騒動はあったものの、俺と3人娘との関係が少しばかり変化した。



そしてこの先更にそこから大きく変わって行く事になろうとは、その時の俺には想像出来る筈も無かった。




NEXT>#8
メンテ

Page: 1 |